日記掲載ネタ〜槍弓編〜 3


8 (椎名)

いつもはテレビを見ていてもうるさい位によく喋るランサーが、何やら真剣にテレビに見入っていたのが珍しくて。
何を見ているのかとテレビをのぞき込んだ。

映っていたのは天災によって一日で消えてしまったという古代の遺跡。
高度な文明を誇った都も、そこで平和に暮らしていたであろう人々も、火山の噴火というどうしようもない天災によって灰の下に埋もれてしまった。

やがて沈黙を破ったランサーの言葉は、やはり珍しくどこか沈痛なものであった。

「…やっぱり最後の時は…大切な人と一緒に死にたいって思うもんなのか?」

ランサーが感傷的になっているのにも驚いたが、それよりもその質問の内容が気になって、あえて聞いてみた。

「お前は違うのか?」
言ったアーチャー自身、昔はともかく今はどうだろうかと考える。
答えは…すぐには出てこなかったが。

「あぁ、俺だったら大切な人には何があっても生きいて欲しいと思うけどな。」

あぁ、そういえばこの男はこういう奴だったか。
自分だって可能ならばそうしたいと思うだろう。

可能、ならば。
「なら、この話のような場合はどうする?どうすることも出来ないとしたら。」

自分も相手も助からない。
そう悟ったとき、この男はどう思うのだろうかと。
なんとなく聞いておきたかった。

「…考えたくねぇ…」

「は?」
何か気にさわったのか。
すこしむくれてぽそりと呟いた言葉の意味を、すぐには飲み込めなかった。

「だーかーら!そういうネガティブなのは御免だぜ? 俺は。」
言って、ランサーはジト目で手をひらひらとさせて見せた。
「その時はその時っていうか…考えてもしょうがねーだろ?そんなことより!」
ぐぐっと身を乗り出して
「今! 俺は腹が減った! 何かお前の作った飯が食いたい! そっちのが大問題だぜ俺には!」

あぁ、そういえばこの男はこういう奴だったか。
改めてランサーはランサーなのだと訳の分からない納得をして、アーチャーは思わず口元を綻ばせた。

「さっき夕飯を食べたばっかりだろうが。」
「うー、でもなんか小腹が減った!軽い物でいいからなんかくれー!」

分かった分かった、と、手早く野菜のスープでも作ろうかとアーチャーは席を立った。

なんとなくだが。
本当にどうしようもなくなったとしても。
この男はきっと大事な人の為に笑っているのだろうと。
そんな気がした。





9 (椎名)

そういえばいつからだったか。
雨が嫌いではなくなったのは。

「あー、降って来ちまったなー…」
オレンジジュースの入ったカップを置きながら、ランサーはつまらなそうに呟いた。
とあるファーストフード店の窓際の席。
注文を終えて食べ始めた時には雲っていただけだったのに、今窓の外では叩きつけるような強い雨が降っていた。

「ふむ。通り雨だろうな。」
テーブルの向かいに座るアーチャーも、メインは食べ終えてアイスティーの入ったカップを片手で弄んでいた。
「どうする?すぐに止むと思うが、しばらく待ってるか?」
ランサーがあまり気の長い性格では無いことを考慮してか、こういう時つい行動をランサーに委ねてしまうのがアーチャーの常だった。
大抵は行動的な選択をする事が多いので、今回も濡れて帰ると言い出すかと思ったが。

「いいや。止むまでまってようぜ?」
雨宿りとは。またらしくない選択だな。
そう思っているのが顔に出ていたのか、
「なんだ?珍しいものでも見たような顔して。」
切り替えされてしまった。

「いや、少し以外だったのでな。雨宿りなど嫌いかと思ったんだが。」
別に隠す事もないだろうと正直に答えれば

「…そうだな…最近好きになったのかもな。」
ランサーは窓の外に視線を向けた。
「こういう時間も悪くないだろ?」
そう行ったランサーの表情は、どこか楽しげで穏やかだった。





10 (椎名)

「アーチャー、ちょっとこっち来いよ。」
屋根の上から突然声を掛けられ、何かと思いつつも取りあえず屋根へと上がった。
初秋の夜風も少し肌寒く感じる屋根の上に、ランサーは何をするでもなくぼんやりと座り込んでいた。

「どうかしたのか?」
声を掛けるも、ランサーはぼぅっとしたままで視線を向けようともせずに
「まぁ座れよ。」
と、隣に座るように促した。
言われるままに腰掛け、目線が同じ高さになって初めて、ランサーが空を見上げている事に気が付いた。
何を見ているのかと自分も視線を空に向けて

思わず
声を上げそうになった。

「すんげーキレイだろ?」

満月。
うっすらと千切れた雲が掛かり、絵に描いたような朧月。
あぁ、なるほど。今夜は十五夜だったか。

「不思議だよな。俺が見ていた月とさ、同じなんだよな。あの月。」

ふと。
気が付いた。

英霊という道を選んでからこれまで

月をキレイだと思う余裕すら無かったのだと。

「ランサー、私は…お前に感謝している。」

少し驚いたように振り向いて、ランサーはようやく視線を月から離した。
「なんだ?別に何もしてねーだろ?」
吹く風が運ぶは秋を告げる虫達の声。
「あぁ、何もしていないな。」
くつくつと笑いを堪え、私は眩しい程の月明かりを目に焼き付けた。





11 (椎名)

いつもと同じ夜の一時。
特に何もなければ食後のお茶を楽しむのが自分たちのいつもの習慣となっている。
お茶を飲みながらテレビを雑音代わりに、今日一日の出来事に思いを巡らせて語らってみたり、読書に耽ってみたり。

そして最近は――

「なぁ、アーチャー」
もの言いたげに掛けられた声に。

「断る。」
「うあひどっ!」
間髪いれずに放たれた回答になぜか講義の声を上げるランサー。
「なんだよ、まだ何も言ってないだろー?」
「君の言いたいことぐらい大体想像がつく。だからその要求に対し断ると言ったのだが。」
なにか問題でも?と新聞から目を離さずに言い放つ。

「いいだろ?一回ぐらい」

ため息を一つついて、新聞から目を離し。
「…どうせ後でもう一回とせがむのが目に見えているからな…だから断る。」
面倒な事は初めから避けたいものである。

「…なんだよ…お前だって嫌いじゃないんだろ?」
駄々をこねるような物言いに思わず言葉を詰まらせる。

「…それは…まぁそうだが…」
「なー?だから一回だけ!ぜってーもう一回とか言わないって約束するからさー?」

…どうも…私は彼のこういった態度に弱いらしい…

だいたいランサーがこうして駄々をこね始めたら簡単に引き下がらないのは良く知っている。
私はもう一度ため息をついて

「…一回だけだぞ…」
諦めたとばかりに新聞を畳む。

「おっしそうこなくっちゃよー!」

それがそんなに嬉しいのか、やおら目を輝かせて居間を出て準備に取り掛かるランサー。

程なくして戻ってきたランサーの手には、一抱えほどのボード状のものが抱えられていた。

「じゃあ俺黒!お前白なー!」

そう。

最近はこうして白と黒お互いの駒を挟み反転させ、最終的に盤面に残った駒の色の多かった方を勝者とするボードゲーム、いわゆるオセロをたしなむというのがこの時間の過ごし方となっていた。

「見てろよー、今日はぜってー勝つ!」
「毎回そう言って未だに一本も取れていないがな」

そう言った自分の顔は、自分でも分かるほど楽しげに微笑を浮かべているのだろう。

困ったことに。

私自身こうした時間を楽しいと思っているあたり、彼の思うつぼなのだろうが。


おまけ↓

「ちなみに俺が勝ったら一回なー♪」




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