日記掲載ネタ〜槍弓編〜 5
15 (椎名)
「なーなーアーチャー、今日何の日か知ってるかー?」
後ろ手に何かを隠し持ち、やけににやにやとランサーが話し掛けてきた。
…何かある…
こういうときは絶対に何かある!
内心の動揺を抑えて今日と言う日に思いを巡らせる。
が
「…ふむ…何の日だったかな…」
結局思い当たる事柄もなく、降参の意味も込めて聞いてみる。
「ふっふっふ。11月11日と言えば…これだろー!」
バックにファンファーレでも聞こえてきそうな勢いで、ランサーは隠し持っていた物を私に向かって突き出す。
−それはき栄光の歴史を誇る赤き孤高なりし物。
それを求めた者には絶対の幸福を約束し、今でも多くの者に愛され、この国では知らぬ者はおそらくいないであろう赤いその姿。
すなわち。
ポッキー。
「なんだよ、知らないのか?11月11日はポッキー&プリッツの日なんだぜー?で、ポッキーと言えばやっぱり…」
「断る。」
「早っ!?」
16 (椎名)
寒い夜は、澄んだ空気に月がキレイなものである。
満月ではなかったが、雲一つない夜空に浮かんだ月は妖しくも美しい。
午後八時。
夕食も済んで一人くつろいでいたところに、チャイムを鳴らす来訪者が一人。
アーチャーはあえて返事はしない。
こんな時間に来る者など、新聞の集金か――
「よぉ。生きてるか?」
この男ぐらいのものだろう。
「…来るなら連絡ぐらい入れないか…」
呆れたようにジト目で言うのは嫌がってはいない証拠だ。
本当に嫌なときは無言でシカトを決め込むのがアーチャーである。
「まぁまぁ。今日は土産も持ってきたんだぜ?ほら。」
言ってランサーは手に持っていた袋から飴色の一升瓶を取り出した。
「日本酒?」
「おう。」
ランサーはにっと笑うと上空を指差した。
「月があんまりキレイだったんでな。たまにはどうだ?月見酒でも。」
月見酒。
アイルランドの英雄の辞書にあるとは思えない単語に一瞬アーチャーは呆けたようだったが。
「…まぁたまには…いいだろう。」
うなずくと台所へ二人分の徳利とお猪口を取りに行った。
屋根に上がって、十分に暖めた熱燗をちびりちびりと傾ける。
こんな寒い中わざわざ屋根の上で酒を飲まなくてもと思うが、冬本番にはまだもう少しあるこの時期である。
厚手の服をきた上で熱い日本酒を飲んでいれば、冷たい風も心地良い。
が。
「なんだ? お前から言ってきた割にはあまり飲んでいないが?」
酒を持ってきた当の本人は、あまり酒を口にしていなかった。
「日本酒は口に合わなかったか?」
寒い国の出身故、度の強い酒には飲みなれているのだろうか。
日本酒程度ではもの足りないのだろうか。
「いーや? 日本酒は旨いんだけどな。」
猪口を一口すすり、ランサーはにやりと笑った。
「俺、酒よりお前で酔えるから。」
こういう事をさらりと言ってのけるのがランサーである。
アーチャーは酒を飲んでもあまり赤くならなかった顔を真っ赤に染めてため息をついた。
「…言ってろ。たわけ。」
そしてこんなことに少しずつ慣れつつあるという事実も。
アーチャーの悩みの種だった。
17 (椎名)
情報化社会、とはよく言ったもので。
今やパソコンを所持しない家庭を探す方が難しい時代となった。
かくいう我が家も、必要はないが無ければ無いで何かと不便であるという理由で、一応それなりの物を持ってはいるのだが。
普段ほとんど娯楽目的でしかパソコンなど使わないランサーが珍しくモニターと睨み合っていたかと思うと、急に険しい表情を浮かべて何事か考え込んでしまった。
「どうした?」
なにか変なサイトに迷い込みでもしたのかと、横からモニターを覗き込み…
「ぬわぁ!?いきなり覗くんじゃねぇよ!」
さすがは最速を誇るサーヴァント。
音速で画面を隠されてしまった。
「…なんだ…いきなり…」
「いいから見んなー!」
ただ事ではない剣幕で押され、渋々その場を離れ後ろに引き下がる。
…心なしか顔が紅潮しているような気がしたが…
しかたなく台所で食器を片づけてみるが…
あぁも必至で隠されては気になって仕方がないというのは人の性というものだろう。
こっそりと。
私は持ち前の視力を活かしてパソコンのモニターに目を凝らし…
がしゃん、と
片づけていた皿を一枚取り落としてしまった。
その派手な音に、ランサーが思わずこちらを振り向いた。
「お前!見るなっつったろーが!」
ランサーはいよいよ顔を真っ赤にしてモニターの前でまくし立てた。
「たわけ!大体何が楽しくてそんな物を…」
画面から飛び込んできた文字の羅列。
それにはこうあった。
ケンカもするけど、仲良しカップル
emiyasirou さん(秘数2)と kuuhuurinn くん(秘数5) ふたりの恋愛を占いました。
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仲がいいときと、悪いときの差が激しくて、ケンカの多い恋になりそうなカップルです。
さっきまでのいい雰囲気が急変、争いごとになってしまったり・・・。
波のある刺激的なお付き合いになるでしょう。
そう。
要するに。
どこにでもあるような占いの結果。
それもランサーと…私の…
「いいだろ別に…ちょっと気になってやってみただけだろうが…」
私は少しふてくされたように食器の後片づけを続けた。
「でもよー、いい結果だったらなんか嬉しいだろ?」
まぁ…それは確かに…
「ではなくて…私が言いたいのはな、その…占いになど頼らなければならない程度なのかということだ!」
言ってしまって後悔する。
ランサーはしばらく目をしばたかせていたが。
「心配すんな。別にこれで気持ちがどうこうってこたぁ無いからよ?」
…こう返されるのは分かり切っていた事だというのに…
にやにやと笑うランサーに何か言い返す気力もなく。
私は敗北宣言変わりにため息を一つついた。
「しかしあれだな。占いってのも当てになんないもんだな。あんまり当たってないし。ケンカばっかりなんて酷いよなー?」
…どうやら…この占いはよく当たるらしい…
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