日記掲載ネタ〜槍弓編〜 10


30 (椎名)

「アーチャーアーチャー!これ見ろこれ!」
そう言ってランサーは嬉々として最近持ち始めた携帯電話を見せてきた。
「何だ、騒々しい」
ジト目で返しながらもアーチャーは携帯電話の小さな画面に目をやった。

『ハッピークローバーv
このメールを4人の人に回してください。そうすればきっと四葉のクローバーの不思議な力があなたの願い事を叶えてくれるでしょう。
ただしこのメールを途中で止めてしまうと、五枚目の葉の悪魔が現れてきっと不幸が訪れるでしょう。』

「だってよ?というわけで早速回さないと……」
「回すな」
ぱこん。
と良い音を立てて、アーチャーが何処からか取り出したスリッパがランサーの後頭部を直撃した。

宝具・全て無に帰す殴打の上靴。

「なっ!なんでだよ!回さないと不幸になるんだろ!?」
元々不幸気質だけどとか心の内で涙するがそれはそれ。
「たわけ。そんな悪質な悪戯にあっさり騙されるな」
「何ぃ!?悪戯だったのか!」
「気付け!」
いい加減こんな事で突っ込むのも面倒臭くなってきたと思うアーチャーだった。

おまけ。

「ちぇ。詰まんねぇ……せっかく願い事が叶うーなんて言うからちょっと張り切ってたのによー」
「何を願うつもりだったんだ何を……」
「え?そりゃあもう……裸にエプロごふ」

密かにメールを回して僅かな希望に託してみたくなったアーチャーだった。





31 (椎名)

例えば風呂上り。
まだ濡れたままで触ると柔らかそうな髪とか。
「時々思うんだけどさー」
画体の割りに意外と細い身体のラインとか。
「お前って結構色気あるよなー」
とランサーは思ったりするのだが。

「馬鹿か正気か気は確かか?」
言われた当人は三段返しで誤魔化して、タオルでわしわしと頭を拭いて顔を覆ってしま

う。
「冗談じゃないって。自分が意識してないだけで。」
特に髪を降ろしてたりするとサイコーとか内心呟く。
「……なら言ってみろ。」
タオルの隙間から僅かに除いた少し赤い顔が、挑むようにやや上目遣いで言ってくる。

「私のっ!どのあたりがそう思うのか言ってみろっ!」

一瞬目を瞬いていたランサーは、むーと唸って考え込む仕草をして見せた。
「んー、そうだな、あえて言うなら……」

ランサーはアーチャーの耳元まで顔を近付けると、そっと囁いてみた。

「そういうトコロ?」

アーチャーの耳を、さーっと血の気の引く音が支配した。





32 (椎名)


例えば風呂上り。
いつもはタテガミの様な印象を受ける長い髪がさらり梳かされていたり。
その青い髪からちらちらと覗くあの……赤い目、とか。
気付けば、目を奪われている自分に気が付いて。

ふと、目が合う。
慌てて目を逸らすと嫌味ったらしぃ笑みを浮かべた。
「ははーん、もしかして俺に見惚れてた?」
「ぐっ!」

この男は……
恨みがましく睨みつけると今度こそ喉を鳴らして笑いだした。
……何か悔しい。
悔しいので少しばかり言い返してやろうと。
「キレイだと思う……」

「……へ?」
相手の間の抜けた様な顔が視界に移る。
上出来、だろうか。
「だから……キレイだと思ったからそう言っただけだ!」
いつもやり込まれてばかりではと、ここぞとばかりに捲くし立てた。

ランサーは眉間を軽く押さえて大きく溜息を付いた。
「お前なぁ、それ反撃のつもりだったらかなり……」
言うと口の端を吊り上げてにやりと笑った。

「カワイイぞ?」


もう何度目になるかも分らない……敗北だった。





33 (椎名)

紅葉を見に行こう、などとランサーが似合わぬ事を言って来た。
この男は意外と、こうした風情のある物が好きらしいという事は最近分ってきたつもりではあったのだが。
「やっぱりそういう季節の風物詩っての?そういうのは大事にしねーとな。せっかく四季の有る国に居るんだし」
そこは元来日本人であるアーチャーも共感する物があるのか、ふむと頷きながら腕を組んだ。
「しかし、時期にはまだ早いだろう?」
カレンダーはまだ10月の上旬である。
紅葉や銀杏もまだ色付き初めたばかりだ。
「んー、やっぱ、まだ時期には早いかねー?」
よっぽど見に行きたいのか、ランサーは口を尖らせてむーと唸った。
「拗ねるな。もう少し経ったら見ごろだろうし、そう焦る事はないだろう。」
それでようやく納得したのか、ランサー渋々頷いた。
そんなランサーの様子にアーチャーは苦笑して、
「まぁ……たまには遠出してみるのも悪くない……」
ごまかすように一つ小さく咳払いをして見せた。

一瞬の硬直。
しかしランサーは数度瞬くとにやりと笑い出した。
「それって遠回しに誘ってくれてるのか?」
「なっ……如何考えたらそういう結論に達するのか理解に苦しむなお前は!私はただ……たまにはのんびりと紅葉狩りと決め込むのも良いだろうと思っただけで……」
ランサーは笑いを堪えるのに必死と言った様子で喉を鳴らした。
「あぁ、でもその前に、すんげー良い紅葉見れたから満足しちまったぜ?」
言いつつ、目を細めてアーチャーを見上げた。
理解するのに要した数秒の後、アーチャーは思わずランサーの頭を軽くド突いていた。

今宵もどこかで、木々が美しく色付いている、秋の夜である。





34 (椎名)


木枯らしも冷たく夜の冷え込みも厳しくなり、いよいよ秋本番といった所。
読書の秋に更け込むも良し。
運動の秋に励むもよし。
芸術の秋に浸るも良し。
秋の夜長、皆様いかがお過ごしでしょうか。

うちの槍弓さんたちも秋を満喫のご様子。


「で、お前は何なんだランサー。」
「何ってなにが?」
「人を押し倒してどういうつもりなのか聞いている。」
「んー?ほら、あれだ。食欲の秋?」





35 (椎名)


「なぁ、お前映画なんて興味あるか?」
 そう切り出したランサーの手には、短冊状の紙切れが握られていた。
「映画?」
「おう、なんか割引券もらってなー」
 商店街で買い物をした際に貰ったらしい。
「何の映画だ?」
「ん?あー、これこれ」
 言ってランサーは紙切れを手渡した。
 見ると、最近密かに話題の友情をテーマにした絵本が原作のアニメーション映画だった。
「悪いが……遠慮する」
 しばらく紙面と睨みあった後、アーチャーは割引券を突き返した。
「そうか?別にいいけど。でもこの映画やたら感動したって評判いいんだよなぁ」
 少し興味があったのか、残念そうに紙切れをぴらぴらと弄ぶ。
「この手の映画は苦手なんだ……」
「んー? なんでー?」
 言い淀むアーチャーの顔を覗き込む。
「む、苦手に何故も何もないだろう」
 そう言って視線の定まらないアーチャーの冷や汗をランサーが見逃す筈もなく。
「ははぁ」
「な、何だ」
 ニヤリ、とランサーは悪戯っぽく笑った。 獲物を捕らえる獣の笑みである。
「お前泣きそうだからだろ?」
「なっ!」
 明らかに動揺しているアーチャーに、ランサーは更に追い討ちをかける。
「図星かぁ?」
「そ、そんな事はないっ!」
その言葉に、ランサーの目が挑戦的に光り出した。
「ふぅん、じゃあ観に行くかー?」
一瞬小さく呻き、しかしこうなると引けないのがアーチャーである。
「ぬ…いいだろう。」
結局、大の男二人で映画(それもアニメ)を観に行くことになったのだが。



「くぅ…ぐしっ」
エンドロール終わって尚隣の席から聞こえるすすり泣きに、アーチャーは思わず声を殺して笑い出した。
「笑うなー!」
涙目になって抗議する英霊一人。
「いや、失礼。君がこうも涙もろいとは。」
「だってアレは泣けるだろ!?いや泣く!つうか泣いた!?」
服の袖でぐいっと目元を拭いながら、上目使いに恨めしそうな視線がアーチャーに向けられる。
「心配せずとも恥じる事はないぞ? 私も君が先に泣き出してくれなかったら泣いていたかもしれんぞ?」
「泣かす!今夜ぜってぇ泣かす!」
妙な闘志を燃やすランサーだった。




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