「……ランサー」
後ろにいる気配に声をかける。
「んー?」
気のない返事。
「そうやって、後ろから見られていると集中できんのだがな」
「あー、ワリィワリィ」
答えはしたものの、視線はいまだ手にした本に向かったまま。
「……そんなに読みたいのならば、貸すと言っているだろう?」
あきれながら問いかける声に
「あー、 それじゃあ意味ねえんだよ」
別に後で読みたいわけじゃないんだ、とランサーは返す。
「だって、オレが見たいのはお前が"今、読んでいる本"だからな」
「……わけの分からんことを」
今、この本を読んでいて、だからなんだと言うのか。
彼は、たまにこうした理解しがたい行動をとる。
「それに俺、字読めねえし」
「……」
理解できない、無意味な行為。
「で? 続き、読まねえのか?」
先を促す背後の気配。
そこからどく気も、覗き見るのを止める気もないらしい。
アーチャーはため息をつくと、
「……せめて、手をどけろ。 重い」
「ん。 わかった。」
意味のない行為を受け入れて、再び本へと視線を戻した。
……本の内容など、結局の所、あまり頭に入ってはこなかったが。
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