web拍手ネタ〜弓士編〜 4


15 (椎名)


「あー、また雨かー」
 聞こえてきた雨音に、お茶を飲んでいた手を止めて士朗はポツリと呟いた。
「ふむ、早めに洗濯物を取り込んでおいて正解だったな」
 二杯目のお茶を注いでいたアーチャーも、湯飲みを置くと窓の方を見やった。
「うー、参ったな、雨が続いちゃったからまだ換えの下着が乾いてないし……」
 アーチャーは一瞬眉根を寄せて小首を傾げた。
「下着なら一昨日洗濯したのがまだあった筈だが?」
 箪笥の中の状態を思い返し言うアーチャーに、士朗は慌てて手をぱたぱたと振った。
「いや、俺のじゃなくてだな……その、お前のが……」
 言われ、アーチャーは一瞬動きを止めた。
 そういえばもう替えがなかったような気がして、アーチャーは頬に一筋嫌な汗が流れるのを感じた。
「まだここに来て間もないし服もそんな揃えてなかったしな……今度また買い足さないと……」
 腕を組んで一人唸る士郎に、アーチャーは一つ溜息を吐いた。
「無いなら無いで別に構わん。元々サーヴァントは衣服など必要としないからな。乾くのを待っていればいいだけの話だ」
 淡々と述べるアーチャーの態度が気に喰わなかったのか、士郎はじっとりとアーチャーに視線を向けた。
「あのな、お前が良くても俺が良くない。お前そういう所全っ然変わらないのな」
 知らず口調を荒げる士郎に、アーチャーも思わずむっとなって反論する。
「お前がどうだろうが知った事か。だいたい普通の服装を着ていろというお前にいやいや付き合ってやっているのだろう。どうしてもというのならお前のを借りてやってもいいが?」
「サイズ合わないだろうがー!」
 雨は当分、まだまだ止みそうになかった。





16 (ペキ) ※青いネコ型ロボットパロ

衛宮さんちの士郎君は、ごくごく普通……とはいいがたい男の子。
西に財布をなくして困っている子がいれば一緒に探し、東に足を痛めて困っているおばあさんがいれば駆けつけて負ぶってあげる。

将来の夢は正義の味方、と大真面目に作文に書く、ちょっと変わった良い子でした。

彼の行動に最初こそ皆は感謝していましたが、それが毎日続くと次第にそれが当たり前、と慣れてしまって。
今ではあちこちで人助けをしては自分をないがしろにする子供を、皆が馬鹿な子だ、もう少し世渡りが上手になればいいのに、と嘆いて……というほどでもありあませんが、とにかく心配しておりました。
このままでは、南に溺れている少女がいれば駆けつけていってレスキューしようとし、北に火事の中家に取り残された赤ん坊がいれば火の中に飛び込みかねないのですから。


そんな、士郎少年の前に、机の引き出しはガタガタとなりはじめ。
中から現れたのは馬鹿みたいに大きな褐色の青年。

「ふむ。おおよそ12歳といった所か。コレは都合がいい。
 おいエミヤシロウ、私はアーチャー、それなりに未来からきた問答無用性格矯正用教育係だ。
 残念ながら古式ゆかしいネコ型と言い張る青狸スタイルではないが、これから未来の貴様が愚かな事をしでかさんように教育をしてやる」
「あー! 机の中がなんか得体の知れない剣だらけの空間になってる!? どうするんだよ夏休みの宿題が入ってたのに!!」
「……突っ込みどころはそれでいいのか? お前……」


未来から来たという謎の教育係、アーチャー。
彼は士郎に人生論やら料理の仕方やらを叩き込みつつ、時にはその固有結界とよばれる四次元ポケットから道具を出して士郎を助けていくのでした。

「どうしたんだ? 士郎」
「……公園で、慎二がブランコを一人で四つも独り占めしてるんだ。何とかどいてもらおうとしたんだけど、全然聞いてくれなくて」
「ふむ、ならば……(たららたったらー♪と、何処からともなく音声)
 ゲイボルグー(やる気のない声)」
「え、や、槍?」
「投げれば必ず敵の心臓を貫くぞ」
「殺してどうすんだよ!?」
「む、贅沢な。 では……ケーリュイオンー(やる気のない声)。振るえば強制的に相手を眠らせることが出来るはずだ」
「……っていうかどっちにしろわりと力ずくだよな。いい、自分で何とかする……」
「ふむ、それが懸命だな」


……道具を出して、士郎を助けていくのでした(二度言った)。




いつか彼らが、一人だけでなく、2人で夢を目指して歩く時。
きっと未来は、輝きに満ちているでしょう。



「っていうかアーチャー、何でお前の出すのいつも武器なんだ?」
「私は基本武器しか持ってないからな」
「……役立たず」
「何かいったか?」
「イヤ別に」





17 (椎名) 2007バレンタイン(文:椎名 イラスト:ペキ)


元々女子からもてる方ではなかった自分にとって、この日は決して好きとは言えない日であったのだが。
ここ数年は好きとか嫌いとか言うよりも、決戦に挑むような気分でこの日を迎えている。
お互いの詰まらない意地による、バレンタインという名のチョコレート対決。
もっとも、自分達にカカオマスから加工してチョコレートを作るなどという技術なんてないので、市販の板チョコ、チョコチップ、チョコスプレー等を利用しての作業になるのだが。
過去数回の対決では言い合うだけ言い合って、結局決着らしい決着はついておらず。
さて、今年はどうした物だろうかと考え込んでいた矢先。
話があると言われ、居間で座卓を挟んで正座し向かい合うこと数分。
いや、性格には奴は胡坐だけど。
ていうか何故に俺正座しているんだろうか。
「そんなに身構える事もあるまい。別に取って食おうというのではない」
「何か嫌だからやめろその言い回し」
思わず反射的に抗議する。
「で、改まって何の用だよ」
身構えるな、と言われるとよけいに緊張する気がするのだから質が悪いとしか言い様が無い。
とりあえず、言葉に甘えて俺も正座を崩して胡坐をかいて一息ついた。
「まぁ、もうすぐ例の……いわゆるバレンタインなのだが」
下手すれば聞き逃していたであろう程小さな咳払いと共に、アーチャーはそう切り出した。
「お、おう。それがどうかしたのか?」
一瞬ぎくりと身を強張らせ、しかし平然を装いつつ、俺はアーチャーを真正面から見据える。
「で、だ。今年は、無駄な言い争いは止めにしたいと思うのだが」
唐突に言われた言葉に、俺は一瞬奴の意図する所を読み取れず、言葉に詰まることしばし。
よっぽど呆けた顔をしていたのか、アーチャーは目を細めてジトリを俺に視線を向けた。
「分らんか? そんなくだらない事で競い合う事も無いだろうと言ってるんだが」
それは、まぁ分るのだが。
それはつまり……
「単純にチョコを交換するって事か?」
「まぁ、そういう事になるが……」
視線を泳がせて言うアーチャー。
言いたいことは分ったけども。
しかしそれでは何か……
いわゆる清く正しい恋人達のバレンタインにおける営みの様ではないだろうか……?
否、そういう問題ではなく。

『何か……物足りない気が……』

キレイにハモッた言葉に、お互い目を合わせ数度瞬かせ。
次の瞬間には不敵な笑みを浮かべていた。
「やはり、貴様とはこうでなくてはな」
「当たり前だ。そうでもなきゃ誰が悲しくて野郎にチョコレートなんてやるか」
売り言葉と買い言葉。
こうなったら、俺の言う事は一つで。
「今年こそ……お前に勝ってみせる……!」
「……ハ、ついて来れるか……?」
どうやら俺達の場合、バレンタインに普通の恋人達が求めるような甘ったるさとは縁遠い様である。






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