web拍手ネタ〜弓士編〜 7


23 (ペキ)


はじめてのキスは  鉄錆の味がした。





『初めてのキスの味は、何の味?』

正直、なんじゃこりゃ、と思った。
この質問の意図が分からない。
他の質問は下世話ではあるが、まぁ情報収集的に必要な要素がどこかにあるのかもしれないな、と思うことも出来た。
が、この質問はさすがに、ないって。




学園に、教育実習生が来た。
教育実習生というものは大概母校にやってくるものだそうだから、おそらくはこの穂群原の卒業生なのだろう。
その教育実習生は何でも現代学生のジェンダーや男女の心理関連を中心に研究をしているのだそうで、穂群原はまさにその研究においても都合のいい場所だったのだろう。
随分と研究熱心なその人物は研修3日目という早々に、アンケートなるものを学生に実施したいと話しだした。
全校生徒対象、内容は異性交遊に関して。
もちろん全て無記名、筆跡等から個人が特定されいないよう穂群原の教諭には答案用紙を公開せず、結果だけが教諭と生徒に公表されるという形だ。
穂群原の教諭の中には、異性交遊等というあまり手放しでは推奨できない内容をアンケートすることに当初反対の者もいたようだ。
だが、学生の現状を把握するためにも必要ではという声に押され、結局実施となった。
論文として結果を発表する際にも、他校の生徒分のアンケートと混ぜられるため、穂群原の悪評にはつながらないとのことである。

だが、異性交遊へのアンケート、というからには、かなりアレな内容に偏らざるを得ない。

たとえば、性交渉の経験はあるか。
たとえば、それはいつのことか。どこでか。
たとえば、コンドーム等避妊具は使用しているか。


うん、めっちゃ、こたえづらい。

そもそもこんなセクシャルハラスメント通り越してエロ全開なものを、よく学校側は許したもんだ。
あまつさえ最初は学校で一斉にやるつもりったというのだから正気を疑う。
結局、さすがにアンケートに書きこんでいる時間等から、性交渉の有無の邪推ができてしまう、ということで、各自持ち帰りとなった。
提出は明日、嫌な宿題もあったもんだ。

今日はやたら早く居間から人がはけたので、炬燵が暖かいうちは、と居間でだらだらとやっていたのだが、どんどんと赤裸々になる質問内容がいたたまれなくなってきた。

特にこの質問15。
なんでキスの味。
異性交遊分析とか、最近の若者の乱れ切った性事情とかそういうのまったく関係ないし。
何だこの質問。ジョークか何かなのだろうか。
気分をリラックスさせるための何かか?
まぁ質問者の意図はともかくとして、問題はこの質問の答えだ。
全部の質問に大して真っ正直に答えを書いてしまったが、ひょっとして、いや、ひょっとしなくても、これはとてもまずいのではないだろうか。


「……出すのやめるかな」
「何をだ?」

突然後ろからかけられた低い声に、知らずびくりと肩が震えた。
気配くらい読めるようになったかと思っていたが、ちょっとでも他のことを考えこんでいたら読めなくなるようではまだまだ修行が足りないな。
咄嗟にアンケートを隠そうとして、しかし思いとどまる。
よく考えたら、このアンケートを隠しても何の意味もない。
こいつもよく知っている……というか、ソレ系の【相手】はこいつしかいないのだから、ここに書かれているようなことは全てこいつも知っているのだ。
黙って、アンケートをひらりと差し出す。
受け取ったアーチャーはしばらく目を走らせた後、なるほど、と首肯した。





<性交渉を行ったことがある、と答えた方は、下記の質問にお答えください>

質問8.初めて性交渉を行った場所はどこですか。下記の項目から選んで○を(略)
→その他:( 廃屋  )


質問9.初めての性交渉はあらかじめ準備をしておこないましたか
→いいえ

(中略)

質問15.初めてのキスの味は、何の味がしましたか。下記の項目から選んで○を(略)
→その他:( 血の味  )


etcetc……


「……犯罪臭いな」
「だよな」


特に15番がいけない。
別に最初に性交渉した所と初めてキスした所が同じとは限らないが、想像力がたくましい人なら、何かしらの性的暴行があったのではないかと疑ってしまうではないか。
実際あれはもう事故みたいなものだったけれれど。一応合意の上ではあった……よな? いや、抵抗はしたけれど。
いやいやそれよりも、これを第三者に提出する気なのか、俺?


「まずいよな……」
「まずいだろうな。提出拒否や無記入提出はできないのか? この手のアンケートはそういった事をしても問題ないだろう。大体、ここまで正直に書かずとも適当にごまかすくらいせんか、たわけ」

まぁ、確かにそうなのだが。
ここまで書いてきた内容は無駄になるが、匿名とはいえ誤解を与えかねない内容を提出するのも……。
返されるアンケート答案を受け取り、ぼんやりと質問を流し見て。

「ウソを書く位なら最初から白紙で出すさ。……でも一応最後まで答えてみるわ。全部見て相当やばそうだったら出さない」
「……個人が特定されないのなら、提出しても実害はないだろうが。好きにしろ」
「ああ。じゃ、続きは俺の部屋で書いてくる」

お休み、と声をかけつつ、自室へ下がる。
相手がアーチャーとはいえ、さすがに人前で続きを書くのは恥ずかしいからな。

自室に入り、もくもくとアンケートの続きを記入していく。
間接的なセクハラのようなアンケートに辟易しつつも、もくもくと。
何でこのアンケートを最後まで答えようという気になったのかは自分でもよく分からない。
そして、ようやく最後の問い。
さっき流し見た時目に入った質問、その答えを、ゆっくりと記入する。

一通り回答を見直したあと、小さく小さくたたんで、鞄の奥底にしまいこんだ。
提出するかどうかは、まぁ明日決めよう。今日はもう遅いし、寝てしまうことにした。
先に引いておいた布にゆるゆると入りこむ。
アンケートを答え終えたことに対する奇妙な満足感とともに、最後の質問をもう一度思い返しながら、目を閉じた。








質問28.あなたは、最初の性交渉について、後悔をしていますか?
→いいえ







24 (椎名)



「士郎、下らない事を承知で聞くが」
「ん?何だよ改まって」
「お前は私が浮気していると知ったらどうするかね?」
「なっ!? 何言い出すんだよお前はっ!」
「ベタなリアクション結構。ただの気まぐれなので気にするな」
「……昼ドラでも見たのか専業主夫」
「つい目に入っただけだ」
「見たのかよ!」
「まぁその辺はどうでも良かろう、で、私が浮気をしたら貴様はどうすると言うのかね?」
「なんでさ、アーチャーは浮気なんてしないだろ?」
「……なに?」
「俺を見守っててくれるって言ったじゃないか。 だから浮気なんてしないだろ?」
「む……まぁそうだが……というかそもそも浮気という言葉自体がだな……いや、この際それは置いておくとしてだな、質問の答えにはなってないだろう?」
「え? あそうか、うーん……お前ならどうするんだ?」
「待て、聞いたのは私だろう」
「だからさ、人生の先輩の意見を参考にしようと思って」
「都合の良い時ばかりそういう事を言うな! だいたいお前は浮気する気があるとでも!?」
「いや、ないけどさ」
「ふん、どうだかな、これだけ周囲にレベルの高い女性が多いのでは信憑性の欠片もあるまい」
「ないったらない!お前こそ天然タラシのくせに!」
「それはお前も同じだろう!」





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