日記掲載ネタ〜弓士編〜 3


9 (椎名)

部屋に響いた小さなくしゃみ。
それが未だに風邪の容態が完治には程遠い事を宣告する。
「うー…怠さが抜けないー…」
布団の中で呻く士郎を呆れた様に見下ろす視線が一つ。

「寒中稽古のつもりか知らんが…まだ真冬には遠いとはいえ、この時期の早朝に薄着で稽古などしていれば風邪を引いて当然だ。」
ましてや床も冷たく冷え込む道場でなど。

「まったく…バカは風邪を引かないなどというが…近年では体調管理のできないバカほど風邪を引くんだ。覚えておくがいいたわけ。」

はい。すみません。よく覚えておきますサー。


「なんだよ…自分だって風邪引いてるくせに!…げほ」

「ぐ…それは!お前の看病してたら移ったんだろうがたわけ!」

「だから余計なことしなくて良いっていっただろ!だいたいサーヴァントのくせに風邪引くなんてお前こそバカだー!」

「あーうるさい!頭に響く!」





10 (ペキ) 2005ハロウィンネタ


日本ではあまり積極的に祝われないその祭の日。
衛宮家は、戦場だった。

銃弾の代わりに飛び交うのは、忙しくまわる声。
刀剣の代わりに、調理器具。
血臭の代わりに、甘い香り。
テーブルの上には戦果とも言うべきクッキーやケーキが堆くつまれている。
しかし、これだけの首級を挙げてなお、戦士達は手を止めようとはしなかった。
ただ無心に、愚直なまでにひたすらに、戦果を積み重ねていく。
二人の戦士達が戦う理由は、ただひとつ。

誰かの笑顔のためである。


「とりっくおあとりーと!」
「はい、じゃあこれをどうぞ」

玄関先に集まった小さな悪魔たちに、衛宮家にいた面々はお菓子を配ってまわる。
悪戯をたてに脅迫したはずの子悪魔たちは、しかしながら礼儀正しく口々にありがとうとお礼を言って去っていった。


ハロウィーン。
ケルト発祥であるらしい、祭。
この行事は日本ではさほど盛んに行われてはいないものだ。
だがしかし、一応教職についている虎が何やら、近所の子供たちに吹き込んだらしい。

「子供たち、楽しみにしてるわよ?
 お姉ちゃんも、士郎とエミヤさんのお菓子楽しみだなー♪」

もちろん、子供をダシに菓子を作るように仕向けたとしか思えない。
虎らしからぬ知能犯だ。
しかも、王様は虎の策謀に乗ってしまったし、あかいあくまと白い少女も乗り気、援軍であるはずの時々黒い少女はこんな時に限って急用があって家にいない。
結果、士郎とアーチャーの二人は、キッチンで大量の小麦粉や生クリーム・砂糖と格闘する羽目になった。


「……ていうか藤ねえ、何十人の子供に吹き込んだんだ……」
 お菓子を配り終わり、女性陣が子供たちを送っていったのを見届け、ひと段落着いた士郎は居間に崩れ落ちた。
 あれだけあったはずの菓子はもうすでに、子供たちと王様と虎、そして甘いものは別腹の少女達によって完全消滅している。
無論、彼ら作成者の口に入ったものは、ない。

「おそらくは、この地区の子供ほぼ全て、だな。
 ひょっとして精神年齢が近いのではないか?」
散らばった菓子皿とそのままにしてあった調理器具を片付けつつ、アーチャーは言う。
疲れ知らずのはずの英霊も、どこか背中が煤けて見えた。

「あんだけあったのに、本当になくなっちまうんだもんなぁ。
結局、自分達で食べる分もないし」
「何だ、食べたかったのか?」
「いや、そう言うわけじゃないけど、一つも味見できなかったのは悔しい」

 結構自信作だったし、と呟く士郎に、アーチャーもうなずく。

「確かに、セイバーの表情を見れば味もおのずと知れるが、今後の参考にできないのは残念だな」
「だよな。食べてみないと、改良の仕様もないじゃないか」

悲しいかな、二人の意見はどこまでも創る側の発想である。

「まあ、子供たちも喜んでいたし、いいか」
「……士郎」
「ん?」

振り返彼の目の前には、甘い香りのする、小さな紙包み。

「Trick or Treat?」

差し出しながら、にやりと笑う姿。

「なんだよ、残ってたのか?」
「ああ、少しだけ取って置いた。もしやと思ったのでな。あいにくと焼き菓子だけだが。
 で、質問の答えは?」

言う男に、少年は苦笑する。

「聞く側と渡す側、間違ってないか? お菓子か悪戯か選択するのは、渡す側だろ?」
「いいや? 『Trick or Treat?』は『お菓子か悪戯か?』だけだ。 つまり、」

言いながらそっと近づく顔。
ほのかに香る甘い香りは、菓子包みか、はたまたお互いに染み付いた芳香か。

「『お菓子か悪戯か、欲しい方を選べ』でも、意味は通るだろう?」
「……そんなの、どちらを選ぶかなんて分かりきってるじゃないか」
「……そうか?」

皮肉気に笑う視線に、士郎も若干顔を赤くしながらも微笑った。

「……じゃあ、『両方』で」






11 (ペキ) でも弓はでてきません

我が家に、最新のパソコンがやってきた。
雷画じいさんが、突如としてくれたのだ。
だがしかし、そう使う宛もない。
買い物が家を空けずにできるのは便利だと藤ねえが叫んでいたが、買い物といえば食材しかしないうちでは、それこそ何の役にも立たない。
食材は自分の目で見ないと意味がないし、そもそもインターネット販売の価格は弱冠高めだ。
そうなると、後は情報収集くらいにしか使えないのだが、あいにくと情報は新聞やテレビで間に合っている。
と、いうわけで、居間のパソコンは現在・・・・

「へー、今日の天気は午後から雨だって、シロウ!」
「むむむ、このレシピ、おいしそうです……いえ、食べたいというわけではないのですよシロウ!?」

この昼間はワリと暇人な、外人さん二人組のものとなっている。
根っからの魔術師である遠坂と、その血を不幸にも継いでいた桜はパソコンに触れる事ができないし、実家にパソコンがあるタイガーはそもそも興味なしのようだ。

かくしてイリヤとセイバーは、真昼間からネット三昧というわけである。
楽しそうなのはいいけど、電話料金はかかんないけど電気代は馬鹿になんないんだからな、それ。

「わーすごい! すごい!!」
「なるほど、コレは確かに……」

そんな俺の心境はどこ吹く風、二人は何やら又面白いものでも見つけたようだ。
あんまり変な所入ったりしてなきゃいいんだが。
と。

「ねえねえ、シロウシロウ! こっち来て来て!」
「ええ、コレはぜひみて欲しい」

二人からお呼びがかかった。
何だかわからないけれど、二人の表情がやけに嬉しそう……というか、小悪魔的な気がするのは気のせいか?

「はいはい、何だ? 一体」

と、手元を覗くと。
それはありふれた、占いサイトの結果画面をプリントアウトしたもの。
ただ、印字されている人物名は、全然全くありふれたものではなかった。

なんていうか。

『emiyasirou さん(秘数2)と emiyasirou くん(秘数2) ふたりの恋愛を占いました。 』



……普通、相性占いに同一人物の名前入力して占ってもらったりしない。



「なななな何やってるんだー!?」
「えー? 何って、アーチャーと貴方の相性占いよ
 真名は一緒だから、入力は結局こうなっちゃうけど」

ほら、弟達の恋愛はおねえちゃんも気になるし?
と、ニヤニヤと笑うイリヤ。
こんな時ばかり姉にならないでくれお願いだから。
ってセイバーさん、貴方何ウンウンうなずいてやがりますか?
そもそもこれ男女だろって突っ込み不可ですか?

「しかも、コレが又結構当たってるのよねー」
「ええ、素晴らしいです。 私付きの魔術師でも、ここまで正確なものを出せるかどうか……」

微妙に気になる物言いに、あわてて結果の詳しい文章を見る。


――『いつも仲良し。親友カップル』
emiyasirou さん(秘数2)と emiyasirou くん(秘数2) ふたりの恋愛を占いました。

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 なんでも話せて、いっしょに居るととても落ち着く、そんな二人です。趣味や好み、性格や容姿も似ていて、「兄妹みたい」周りからも言われます。相手の喜びや苦しみをわかちあえるカップルでしょう。――


ってナンデショウコレハ。

「性格や容姿が似てるって、当然よね。だって元は同じだし」
「ええ、文字通り兄弟のようなものでしょう」
「『似た者同士なので、ついズルズルとした交際になりそうです。』だって。ここなんかぴったりじゃない?」
「確かにこちらがイライラするほどに、中々進展しませんね。
 仲がいいのは良い事ですが、その立場に甘んじているようではいけませんよ、シロウ」

フリーズした思考のはるか遠くで、何か言ってるような気がします。
でも俺にはもう何なんでしょうか、「付いてこれるか?」「いや無理」みたいな。

「さーってこの結果、アーチャーにみせよーっと」
「ええ、リンとサクラにも見せてあげねばなりませんね」
「!? っだあああぁぁぁ!! 待て待て待て!! ソレは!! それだけは!」

特に赤いお二人に見られたらなんと言うか俺の命がライブでピンチ!? 社会的に。
「恥ずかしがる事はないのですよ? シロウ」
「恥ずかしいとかなんというかそんなんじゃない!
 イヤ、恥ずかしいんだけど、恥ずかしいレベルじゃなくて、むしろ生き恥!?」
「だめよー、そんなんだからいつまでたっても進展しないんだから!
 少しはコレでアーチャーも焚き付けてあげないとね!」
「イリヤ! いや姉さん!! 頼むから止めてくれ!!」

セイバーとイリヤがプリントアウトしたものを手に、縦横無尽に逃げ回る。
それを追いかけながらも。
内心、まあ悪い結果よりはいいかなあと思ってしまうあたり。
――俺もかなり馬鹿だなぁ。


で。
一応、占い結果を印字したモノはその場で破いたのだけれど。
よくよく考えたら、あんなものいくらでも量産できるんだったっけと気付いたのは、あかいあくまに散々いびり倒された後だった。

※※※※一部フィクションw(占い結果)※※※※




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