違う色 (ペキ)



コイツは、白くて、黒い。

鈍く輝く白銀の糸と、深い褐色の肌と。
元は「同じ色」だったなんて信じられない。

けれど、ふとした時。

そう、たとえば、風呂上りにふと髪を下ろしているヤツの姿を見たりなんかすると。
何となく、どきりとしてしまう。

全く違う色。
ただ、形がほんの少しだけ似た あるいは戻った だけ。

それだけで、なんだか落ち着かない。

ヤツと自分とがまだ似ていると  つながっていると  気づいてしまうこと。
それと同時に、わずかな共通点を見たことで、かえってアレとはもう違う存在なのだとわかってしまうこと。

それが、いやなのか、ほっとするのか。
よくわからないけれど。



「何を見ている?」

だらだらと寝転びながらずっとアーチャーを凝視していたら、流石に気づかれた。
いや、最初から気づいたんだろうけれど。

「んー、別にたいしたことじゃないんだけどさ」

ちょっとこっち来てくれ、と呼ぶ。
寝転がったままで呼びつけられたことに少し不満そうだったが、アーチャーは一応こちらに来てくれた。

「何だ?」

俺はそれに答えず、手を伸ばす。
まあ、起き上がっていないので、ちょうどアーチャーの腰辺りまでしか手が届かない。
何となく、自分が立ち上がるってこいつに合わせるのがいやなので、
そのまま手をぶらぶらさせて、しゃがむようにうながしてみる。

「……お前は何がしたいんだ」

あきれたように嘆息しながらも、しゃがみこむ影。

近づいてくる頭に手を伸ばし、そのままアーチャーの髪を一房引っ張った。

「っ! 一体何を・……」

文句を言うアーチャーをそのままで、白銀の一房を弄ぶ。
手に伝わる感触は、風呂上りだからというのもあるだろうが、思ったよりもやわらかい。
何となく、自分の髪質とは少し違う気がする。
俺のはもうちょっと硬いような……。


と、今度はヤツもうつぶせに寝転がって、俺の頭をいじり始めた。
なでる、と言うよりもくしゃくしゃかき回すような感じ。
明らかに子供かペット扱いのような気がしてちょっとムッと来たけれど、
それを言うなら俺のほうが先にやり始めたのだし、何よりアーチャーも何も言わなかったので。

俺たちはしばらくお互いの髪を触れ合っていた。




「こんな色、してるんだな」

何となく、呟く。
電光の下でも、透けるように白い髪。
改めてこうして間近で見ると、その色にひどく目を奪われる。

「こんな色を、していたのだな……」

ふと、アーチャーも呟いた。
別につらそう、と言うわけではなく。
どちらかというと少し驚いた、と言うような響きの声。



違う色。
元は同じだった色。
変わってしまった色。
でも。

「アーチャー」
「何だ?」

変わってしまっていようと。
変わってしまったからこそ。
同じようで、でも全く違うからこそ。

「俺、この色、好きだな」
髪を引っ張って、言う。

「……私も、この色は、嫌いではなかった」
お返しとばかりに、頭をくしゃりと撫で返して、ヤツも微笑った。




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