web拍手ネタ〜槍弓編〜3


8 (椎名)

部屋を支配するのは夜の静寂か。
あるいはそれ故に際立つ喧騒か。
時を刻む針の音がやたらと耳につく。

次第に熱を帯びて行く部屋に、ランサーは緊張した面持ちでただその時を待つ。

「なぁ……アーチャー、その……本当にやるのか?」
「何だ? 今更怖気づいたのか? 言い出したのはお前だっただろうが」
「う……そうだけどよ……いいのか? お前始めは嫌がっていたし……」
「良いも何も。お互いの利害が一致した故、今回は許可しただけだ」
小さなため息が、準備が整った事を知らせる。
「準備は出来た。覚悟は十分かランサー?」
言われ、ランサーはピクリと身を強張らせる。
「お、おう。じゃあ明かり消すぞ?」


ぴちゃ。

ぼちゃり。

ぴちぴち。

ぽふ。

「ぽふ!?」
「ふむ。やはりアレが……」
「アレ!?」
「ふ。せっかくの闇ナベだからな」
「てめっ! 何入れたこら!」
「言っては闇ナベの意味があるまい? 心配するな。食えないものまでは入れていない」
「そ…そうだな…なんか怪しい笑い声とか聞こえるけど気のせいだよなっ!」
「笑い声……?」
「…………」
「ふむ…ワライマンドラゴラなど入れてはなかった筈なんだが……」
「すまん俺が悪かったもう闇ナベやってみたいなんて言わねーからふつーの物食べさせて下さいまぢで」



二人だけの険しいナベが、幕を開ける。





9 (ペキ)

梅雨は明けたのか否なのか、不安定な天気の合間の、炎天下。
そんな熱気の中、そこだけが冬季の水鏡の様に冴え、張り詰めた空気だった。
否、むしろその空気の底には、外気以上の熱を孕んだ何かがあった。

対峙するは、赤と青。
およそ15m程の距離を置いてたたずんでいる。
赤は半身――というよりもむしろ横身になって、対する青は前かがみになり、互いの腹を探り合っている。
彼らにはすでに、自分達へと向けられた歓声も苦言も届いていない。
ただ、目の前の相手が繰り出してくる次の一手を読み切ることだけに集中していた。


先に動いたのは。
当然だが、青の方だった。

「――届きやがれぇぇ!」

咆哮と共に、渾身の一撃を振りかぶって投擲する!!

迎え撃つは、赤!

「――くっ!」

攻撃は、赤にとって予想通りの軌跡を描いてたどり着く。
しかしその予想を上回るのは、スピードと、破壊力だった。

スピードのある攻撃は破壊力がない、というRPGうんぬんのお約束は、全くの嘘である。
速さは、すなわち力。
それだけの速度を出すほどの恐るべきエネルギーが物体にかかっているのだ。
衝突事故ならばスピードが出ているものの方がより危険であるのと同じ事。
速い攻撃が軽いという認識は、単に質量の少ない人物の方がすばやく動ける場合が多いだけの事。
しかし、質量が同じものならば、速度と破壊力の関係は言うまでもない。


しかし、スピードを見誤ってはいたものの、アーチャーとて鷹の目を持つ男、完全に迎撃できなかったわけではない。
中心を捉える事はできなかったが、わずかに掠める事は出来た。
……わずかに掠めただけだというのに、攻撃は進路大きく逸れ、あらぬ方向へとはじかれる。

だが、それはアーチャーの「一度」の敗北を意味していた。
その「範囲」内に攻撃を打ち返すことが出来なければ、負けなのだから。











「ファーッル!!」

イリヤが、楽しそうにぐるぐると手を回しながら叫ぶ。
どうも審判のサインがいまいち分かっていないようだが、まあそれは大した問題じゃない。
叫んだ内容があっていればいいだけだし。

ランサーの投げた球をアーチャーがはじいたようだが、どうやらファールだったらしい。
ようだ、とからしい、とかなのは、言うまでもなく良く見えなかったから。
悔しい事に、今の俺ではギリギリまで強化した視力でも残像を見るのがやっとだ。
まぁ英霊同士のやり取りが見えてるだけ、少しはマシになった方だと思う。


冬木市、新都の公園。
休日だというのに人っ子一人いないのは、あいかわらずだ。

だけれど、今日ばかりは都合がよかった。
広くて、人気がない空間。まさに異能者たちが思う存分力を使うには十分だ。
すなわち、全力で遊ぶには。

ちなみに今日は野球。
と言っても、ルールはめちゃくちゃだ。
何せ、人数が足りない。
ついでにサーヴァントたちが全員思いっきり遊んだ場合、俺たち魔術師じゃついていけない。
で、結局ピッチャーとバッターの一騎打ち形式勝ち抜き戦って事になった。
それでもアウトなんかのルールをかなり変更済み。
5球勝負、打った数が多い方が勝ち。飛距離は関係なし。
「ファール」はありでストライク扱いだけれど、「ボール」は厳密なのはなし。
何でかというと、ストライクゾーンが分からないからだ。つまり、キャッチャーの所にボールが届いたらストライク、ってこと。
ボール無しと言っても、さすがにキャッチャーが到底取れないような場所に投げたら「ボール」扱い、打者の得点になる。
後、「デッドボール」の「報復」あり。
……遠坂が決めたこれがどういうルールだか、あんまり突っ込みたくない。幸か不幸かデッドボールはまだ出ていないけれど、血を見ないですむ事はなさそうだ。

ちなみに、キャッチャーは常にバーサーカー、球取りはランサーかライダーだ。おいつけないから。
ランサーが今投げているので、自然球取りはライダー。
相当苦労しているみたいだった。天馬が常に待機している辺り、よっぽどの球速なんだろう。
マッハとか。

今は二回戦目、ランサーが先攻、アーチャーが後攻。
アーチャーはやる気がない、とか言っていたくせに、なんだか随分必死な気がする。

ランサーは、まんま剛速球タイプだ。
変化球とかはとんでもない方向にいってしまうので、練習時以来投げてない。
まさに直球勝負。
ただ、時たまわざとゆっくり投げたりして撹乱してくる辺りが怖いというか、意外と策士だ。
バッターとしてはギリギリまでボールを見てても間に合うほどのスイングの早さが武器。
動体視力も流石だ。

アーチャーは、精密コントロールタイプ。
ストライクゾーンは9分割どころか16分割くらいいってるんじゃなかろうか。
外角高めに投げたと思ったら、内角低めに投げて……といった感じに撹乱したり、時々変化球も混ぜてくる。
球速が他者より劣る分技術で勝負って言ったところか。
バッターとしては鷹の目と分析能力、心眼で勝負。

全く逆のタイプだけに、見てて楽しい。
……いや、俺にはあんまり見えないけどな。


「――ランサーは2球打ってるから、残った2球、アーチャーははずすわけにはいかないわね。
……ね、どっちが勝つか、賭けない?」

遠坂がニヤニヤしながら言ってくる。
頭の中でどんな計算がされてるんだか、見当もつかない。

「賭け……って、そんな金、ないぞ?」
「そういうと思ったわよ。大丈夫、金なんか要求しないわ。
 そうね、これからの食器洗い分担、一週間分とか、どう?」
「それならいいぞ」
「いい返事。で、士郎はどっちに賭けるの?」

と、乗ってみたものの。
正直、互角すぎて分からない。
ランサーは5球中、2球打っていて、アーチャーは1球打っていて残り2球。
まさに予想がつかないところだ。

「……遠坂はどっちだと思うんだ? 俺は遠坂の逆でいいよ」

いうと、遠坂も困った顔で

「私も士郎の逆でいいと思ったんだけどね」

と、肩をすくめた。

「じゃ、私はランサーにするわ。
 アーチャーの方は……なんか必死そうだけど」

なるほど、確かにアーチャーは必死に見える。勝負前の参加の渋り方が嘘のようだ。
先ほど、アーチャーとランサーが勝負前になにやら話した後から、どうもアーチャーの目つきが変わったような……。

「なら、俺はアーチャーだな」

言って、視線をマウンド上のランサーに移した。
気合を入れて見なければ、本当に見過ごしてしまうのだから。




結果は、2対1。
アーチャーの負けであり、俺の負けだった。
……なんか複雑な気分だ。

敗因は、ファールがストライク扱いで得点にならない事と、なによりも「強化」したバットがランサーの球速に耐えられず、へし折れてしまった事。
最後の一球は確実にど真ん中を捕らえてたんだけどなぁ。

まあ、負けても俺は皿洗い程度だから別にどうということはない。
ただ、勝ったランサーがひどく上機嫌でマウンドから降りてくるのに対し、負けたアーチャーがこの世の終わりのような顔をしているのが気になる。


「おめでと、ランサー。貴方のおかげで私も勝たせてもらったわ」
「おーそりゃー良かった。お互いにハッピーだな!」

これ以上ない、という喜色で顔面を埋め尽くしたランサー。
その様子とアーチャーの様子の対比に、思わず

「……ランサー、アーチャーとなにかあったのか?」
「ん? ああ。坊主達と一緒だ。俺とアーチャーも賭けをしたんだよ」
「賭け?」
「……聞きたいか?」

いかにも聞いてくれといわんばかりの笑顔に、俺は何となく微妙に背筋にくるものがあった。
しかし、遠坂はそれを感じなかったのか「焦らさないでよ」と先を促す。

「週あたりの日にちを、な。打った回数によってアーチャーは減らす、俺は増やすって風になー」

差し引き一日しか増やせなかったのは残念だけど、贅沢はなしにしとくか! というランサー。
……なんだろう、言ってる意味が分からないけれど、なんか微妙な予感がする。

「週あたりって……」
「ん? ああ、よーするに」

ぴっと指を立てて、ニヤリと一言。



「週に何回、夜ヤるかってこと」



遠くで、アーチャーの絶望の悲鳴が聞こえた気がした。
……がんばれ。



でもな、アーチャー。
その賭け、受ける前の次点で、なんか負けてると思うぞ。

週に何度もしてるあたりとか。





10 (椎名)

「アーチャー、お前が欲しい」
「これはまたこれ以上ない程の直球だな。」
「えーなんだよー直球勝負って言うから正直に言ったんだろー?」
「直球過ぎてむしろ呆れる」
「じゃあ遠まわしに言えば良いのか?」
「そういう問題ではないだろう」
「じゃあどういう問題なんだよ?」
「む……そう言われてもな……そもそもこんな馬鹿げたことを考えた奴に問題が……」
「んー、じゃあ……

アーチャー好きだぁ!(がばぁ)」
「それは直球というよりただのバカだろうが!」

お題、直球勝負でしたw





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