日記掲載ネタ〜雑多編〜 1


1 (ペキ) 槍と弓と士郎

今年何度目かの、大型台風接近。
となれば、流石に備えもなれたもので。

「おーい坊主。窓の補強終わったぜー」
「……植木の補強も終了した」

等と、こちらが言わなくてもすっかり所帯じみた英霊達が独自に動いてくれる。
なんだか、ちょっともったいないような気もするけれど、正直ありがたい。
特に、今回の台風は予想以上のスピードで接近してきた。
まだ暴風域に入っていないというのに、早くも瞬間最大風速が15Mを越えてしまった。
これ以上ひどくなる前に、早めに準備を整えておかなければ。

俺はというと、屋根の補強。
早々めったなことでは屋根瓦が飛んでいったりはしないけれど、今年はその「めったなこと」が続いているし、用心にこしたことはない。
ひび割れたものは補修し、ぐらついているものはきっちりとはめ込む。

と、いつの間にかランサーとアーチャーもこちらに上ってきていた。
こういうとき、はしごを使わなくても上がってこれるこいつらはいいなあとか、少し思ってしまう。

「なんか、手伝うことあるかー?」
「ん、大丈夫だ。もう終わった。後は道具を片付けるだけ……」

言って、立ち上がった時。

ゴオッ

突然の、強風。

ふわりという、浮遊感。
ついで体が傾いて、心臓が急の事態に縮む。


落ちる…!


と、

「おっと」
「む」

ぱしり、と。
右と左、両の手がそれぞれ赤と青の男につかまれた。

半分以上落下しかけていた体を、二つの手が持ち上げる。

「おいおい、大丈夫か?」
「たわけ。気を抜くからだ」
「あ、ありがとう……」

そう、お礼を告げたのに。
二人は、なかなか手を離さない。
ちょうど俺は、ぶらりと宙吊り姿のまま、二人の手から吊り下げられている形で。

「いや、いい加減離せって!」

俺が手を振り解こうと暴れると。
二人は、にやりと笑って手をさらに硬く握り、余計に手を高く上げてこちらをぶらぶらと振ってくる。

「んー。どうしようかねぇ?」

ニヤニヤと笑う二人。

……遊ばれている。

「いいから下ろせよ! 遊んでるんじゃねー!!」

多いに暴れると。

「ん? 離してもいいのか? 下まで随分と距離があるようだが」

うわ、卑怯だ。

「いやーこうしているとよ、なんか親子みてーだなー」
「確かに。聞き分けのない子供をこうしてあやしてやっている両親の気分だな」
「誰が誰の子供だってんだ!!」

チクショウ、なんだよ、普段ならアーチャーだって『誰と誰が親子だ!』とかいって怒りそうなもんなのに。
大体、どっちかって言うと、こんなことしているあんたらの方が子供じみてるじゃないか。

……まあ。
相変わらず手を離さないまま笑い続ける二人は少しむかつくけれど。
こうして、一緒に台風に備えたりするのは、『親子』って言うより『家族』って感じがして、いいかもしれない。

宙ぶらりんのままそんなことを考える俺は、やはり子供なのかもしれなかった。




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