日記掲載ネタ〜雑多編〜 3


3 (椎名) 槍と弓と士郎 2004年クリスマスイブ

12月24日深夜。
既に寝静まった衛宮邸。
その家の主、衛宮士郎の部屋に忍び寄る人影一つ。
縁側の床板を少しも軋ませることなく歩を進めるその動きは、獲物を狙う猛獣のそれに良く似たり。

衛宮士郎の部屋の前にたどり着き、そっと襖をずらし、中を覗き見る。
残念。かわいい寝顔を拝もうにも、運悪く向こう側を向いて就寝中のようだ。
しかし今は好都合。

起こさないように気配を殺し、一歩。また一歩。

その枕元まであと数メートル。

「…何をしているんだお前は……」
「!!!!!」

思わず床に突っ伏しそうになるのをなんとか堪え、ランサーはぎぎぎぃと肩越しに振り返る。

「むー!あーあーうーむむー!」
大きい声を出すなと無言で唸って講義するランサーに、アーチャーは一つため息をついて。
「いいから……とりあえずそれを置いたらとっとと部屋を出ろ……」

それ。
すなわち。
ランサーの手にしたクリスマスプレゼント思しき包みを視線で指して。

ランサーはこくこくと頷くと、包みをそっと士郎の枕元において、無音かつ音速で部屋を飛び出した。

意外と器用な奴である。

「はぁ……はぁ…お、脅かすなアーチャー!危うく士郎起こす所だっただろう!」
がぁーっと小声の咆哮を上げるランサー。
「まったく……わざわざそんな周りくどいことをしなくても堂々と渡せばいいだろうが……」
「ばーか。起きたらプレゼントが置いてあるってな所が重要なんだろうが。」
「……変な所にこだわるな……」


「で?ちなみに何を?」
場所を居間へと移し。
アーチャーの入れたお茶を飲みながら。
「んー?えーっと…なんてんだっけな…そう、ストラップ?」
「ストラップ?」
思わずオウム返しに聞き返していた。
よっぽど意外だったらしい。

「おう。実はこれと同じやつ。」
言ってランサーは自分の携帯電話を取り出して見せた。

付いていたのは、きれいな赤と青二色のプレートのストラップ。

そう。

二色。

「ランサー……それを……その……まんま上げたのか……?」
「ん?そうだけど?」

アーチャーは盛大にため息をつき。

「それはな……普通恋人同士なんかで片方づつ分けて持つペアストラップというやつだ……」

「へ?」

間抜けな声が居間にこだまする。

やがてランサーはぽんと小さく手を打ち。

「そーいや片方だけ包んでくれって言ったら店員さん変な目で見てたな。」
「当然だたわけ!」

もうすっかり定番になった突っ込みを入れて、アーチャーはお茶を一口すする。

「なんてな。ほい。」
「?」

突然投げられた物を、反射的に受け止める。
おそるおそる掌を覗き込むと、そこには赤いプレートがしっかりと収まっている。

「俺だってそれぐらい知ってるって。それ、お前の分。」

「・・・・・・」

しげしげと見つめた赤いプレートに移ったアーチャーの顔は、自分でも情けなくなるくらい間抜けだった。

「ちなみに、士郎には白と赤のやつだ。」
「なんでさ!?」
「なんでって気ぃ使ってやったに決まってるだろーが。」
「変な気を使わんでいい!」

はぁ、と一際大きなため息をつくと、アーチャーは思わず笑い出した。
「まったく…それでは一つ余る…」
「いいんだよ。もう一つはちゃんと上げる奴がいるから。」
アーチャーは少し考え込み。
「…あぁ、確かに。」
言ってもう一口、少し渋めのお茶をすすった。


「で?お前は何かくれないのかー?」
くれくれのポーズで目を細めるランサーに、アーチャーはジト目で返す。
「たわけ。見返りが欲しくて贈り物をするのかお前は。」
「ちぇー。けちー。」
「言ってろ。」

無論。用意はしてある。
といっても、何を上げたものかと考えた末、それよりは明日二人をどこかへ少し遠出に誘ってみようと企てていたりするのだが。
それはまだ、明日の朝までは内緒である。


ちなみに、クリスマス当日の夜、士郎が思いっきり力を込めた献立で感謝の意を表したりしたのだが。
それはまた別の話。

※※※※

余ったストラップは、これを読んで下さっている皆様へ。






4 (椎名) 槍と弓と士郎

「おはよう二人ともー」
まだ寝ぼけ眼で居間に入り、すでに起きていた英霊二人に挨拶を送る。
「あぁ、おはよう。」
アーチャーはお茶を淹れながらいつも通りの素っ気ない返事を返してくる。

もう一人は…

「あー、おはようさん…」

畳の上に横になったまま、こちらに目を向けもせずにぶっきらぼうに返してきた。
明らかに機嫌が悪そうである。
飲みすぎて二日酔いと格闘中なのかとも思ったが、彼に限ってそんな事はないだろうという気がした。

アーチャーが台所に朝食の支度をしにいくのに便乗して自分も台所に向かい、ランサーには聞こえないように小声でアーチャーにどうしたのかと聞いてみた。

「あぁ…まぁ…何だな…」
アーチャーは照れくさそう、というよりもむしろ呆れたように、

「初夢にお前も私も出てこなかったらしくてな…それで今朝からむくれている。」

「はい?」

…あー、そういえばランサー初夢がどうのとかやたらと意気込んでいたような…

「しかしそんな理由で不機嫌になられてもなぁ…」
「まったくだ…」

二人して小さくため息をつき。

ふと。ランサーを元気付けるでもないが良いことを思いついてしまった。

…あんまり進められた案ではなかったが…


数時間後。

「よ、二人ともいるかー?」
るん、なんて擬音が聞こえてきそうなほどに良い笑顔で居間に入ってきたランサーを、アーチャーはきょとんと見上げてしまった。

「ど…どうかしたのか?」
恐る恐る聞いたアーチャーに、、
「ん? 別にどうもしないぜー?あ、アーチャーお茶くれー」
ランサーは鼻歌交じりで答えた。
アーチャー士郎と連れ立って台所にお茶を淹れに行き、
「士郎、お前ランサーに何かしたのか?」
おそらくは原因であろう張本人に聞いてみた。

「それが…夢に出てこないってことはそれだけランサーが大事に思ってくれてるって事なんだろうって言ったら…あぁ元気になっちゃってな…」

がしゃん。

アーチャーはおもわずお茶の缶を取り落としてしまたった。
「お前は!またそう余計な事を吹き込むんじゃないたわけが!!」
茶缶の蓋が開いてなくて良かった、などと思考の隅で思いながら、アーチャーは士郎に詰め寄った。

「だ…だって仕方ないだろー!そうでも言わないと機嫌直してくれそうになかったんだからー!」
「ぐ…」

二人はしばし睨みあい、そして同時に深々とため息をついたのだった。





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