日記掲載ネタ〜雑多編〜 4


5 (イラスト:ペキ 文:椎名) 槍士(後半ほんのり槍弓風味) 

夏もそろそろ終わりを向かえようとしている。
あれだけ騒がしかった蝉の声も数える程になってきた。
そんなどこか物寂しさも、この晩夏ならではなのだろう。

で、そんなこの時期、冬木市民のささやかな楽しみとなっているのが、近くで行われる花火大会である。
実は衛宮家の縁側は、民家の隙間からうまい具合に花火が良く見える特等席だったりする。
で、せっかくなので浴衣を着込んでニッポンの夏を満喫しようという事になったんだけど。

「しかし……なんだってこうも似合うかなこの外国人は」
ついでだからと物置から引っ張り出してきた風鈴を縁側に飾ろうとして、ふと視界に入った淡い色の浴衣を隙なく着こなすランサーに、思わず唖然として呟いてしまった。
というか違和感がなくてかえって違和感あるんですけども?
「なんだ?惚れ直したか少年」
こっちの視線に気付いてか、にんまりとやらしい笑みを浮かべて来る青い奴。
……こういうやり取りにも幾分慣れかけてきている自分も嫌だけど……
「あー惚れ直した惚れ直した。ランサーは何着てもよく似合う。」
適当にあしらってこの場から脱出しようとして
「そういうお前はあんまり似合ってないなー」
次の瞬間には背後を取られていた。
「なっ! 何時の間に!?」
その速さ、まさに最速の英霊の何相応しく。
「おー、結構焼けてるなー」
ぐい、と浴衣の襟を引っ張られ、胸元まで肌蹴させられてしまった。
「ちょっ!何すんだお前わ!」
慌てて襟元を掴んで抗議する。
「……っておい!」
思いっきり後ろから抱き竦められ、今度こそ耳まで真っ赤にして狼狽える。
「なんだよ、惚れ直したって言ったろー?」
露わになった首の後ろに軽く悪寒が走り……

小さな風鈴の音が、しばし辺りに響いた。





「おー、結構焼けてるなー」

などとじゃれ付いてみたのはほんの冗談ではあった。
けどこいつの少し焼けた肌色を見て思わず……
ぎくりとした。

その色が、アイツと重なったせいかもしれなかった。

何だか無性に息苦しくなって。
思わず、少年を抱きしめていた。

「……っておい!」
当然の抗議。
適当な屁理屈で誤魔化して。

「そこのバカ1バカ2。そろそろ縁側まで出てきたらどうだ。」

縁側の方から駆けられたアーチャーの声に、少しだけ安堵した。

解放された士郎はスタコラと縁側の方へと駆けて行く。
その背中を追って自分も縁側へと向かう。

大丈夫だと。
自分が意地でも、お前等には楽しんでもらうのだと。

始まった花火を見上げ、そっと胸の内の片隅で拳を握る。




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