日記掲載ネタ〜雑多編〜 9


10 (イラスト:ペキ 文:椎名) 金士 ※士郎さんがメイドさんです

 快晴、とはいえないが、気温は暑くもなく寒くもなく心地よい。
 薄着一枚では少々肌寒い、季節はすっかり秋の冬木市。
 秋、といえば、文化祭の季節である。
 本当ならば、楽しい筈の祭りの準備。
 しかし士郎には、今年は苦悩の準備期間となった。

「雑種、入るぞ」
 和室である士郎の部屋には鍵など付いておらず。
 襖を開ける前に声ぐらいかけろ、とようやく仕付けられたのはついこの間の事。
「あぁ、ち、ちょっと待ってくれ」
 なにやら慌てた返事と、がさごそと何か紙の擦れるような音。
 数秒の後、ガラ、と襖が開かれた。
「ど、どうかしたのか?」
 額に一筋冷や汗を垂らして出迎えた士郎に、ギルガメッシュは胡散臭そうに眉根を寄せた。
「何、腹が減ったので何か食事を用意する許可を与えにきたのだが」
「そうか。何か食べたい物あるか?」
 日常茶飯事の物言いにいちいち腹を立てていては、この王様の世話などできない事を士郎は良く知っている。
 すっかり慣れた様子の士郎に、ギルガメッシュは腕を組んで考え込んだ。
「ふむ、直ぐに出来るものでかまわんが……随分慌てて何をしていたのだ?」
 士郎はぎくり、と肩を強張らせて息を呑んだ。
「べ、別に? ちょっと文化祭の準備をしてたいだけだから気にするな」
 だらだらと額に嫌な汗を流す士郎の向こう、部屋の片隅には、なにやら大きな紙袋が無造作に置かれていた。
「あれは?」
 問われ士郎は、いよいよ顔色を変えて引きつった笑みを浮かべた。
「あ、あれは! えーっと、そう、文化祭で使う道具だ。大した物じゃないぞ? それより腹が減ったんだろう? すぐ用意するから居間へ行こう居間!」
 誤魔化すように言うと、士郎は強引にギルガメッシュを押して部屋を離れた。
「ふむ……」
 そんな士郎の態度にいぶかしげに息を吐きながらも、ギルガメッシュは大人しく士郎に付いて行くことにした。
「まぁよい。当日になれば分ることであろう」
ギルガメッシュの呟きがかすかに聞こえたらしく、士郎は目を数度瞬かせて眉をしかめた。
「何か言ったか?」
「久しぶりにコロッケを食したくなったと言ったのだが」
「げ、また面倒な物を……」
 結局、この日ギルガメッシュは詳しく追求する事はなく。
 晩御飯の食卓にはきっちりと揚げたてのコロッケが並んだのだった。 

 そして文化祭当日。

「何でお前が来てるんだよ……」
 血涙でも流す勢いで、士郎はギルガメッシュをジットリと睨みつけた。
「随分と無礼ではないか。我は客ぞ?」
 言いながらも。ギルガメッシュは必死で笑いを堪えている。
「だーかーらー! 何でお前が!」
「無論。文化祭とやらを見てやろうと思っただけなのだが? しかし……随分と似合っているぞ? その侍女姿」
「言うなー!!」
 そう。
 今年の文化祭、士郎のクラスの出し物は、あろう事かメイド喫茶。
 普通ならば、ウェイトレスは女子が勤めるのだが。
 一部の生徒会の陰謀で、いつの間にか士郎他数名の男子生徒もメイド姿でウェイトレスに駆り出されてしまっていたのだ。
 当然今の士郎の格好は他の販売担当の生徒同様可愛らしいメイド姿。
 ちなみに古式ゆかしいロングスカートのメイド服なのは、絶対ミニスカは嫌だと泣いて頼み込んだ末の士郎の妥協案であったりする。
 ついでに女の子らしくカツラをかぶってカチューシャも完備の徹底ぶりだったりする。
「……思うに不自然な程に似合い過ぎているのだが……そういう趣味でも持ち合わせていたのか雑種」
「んな訳あるか。 大体なんでこんな企画が通ったのかも不思議だぞ俺は」
 言って眉間の辺りを押さえて深く溜息を吐く士郎。
 予断ではあるが。
 この学園切っての犬猿の仲である優等生二人が、この時ばかりは手に手を取って一致団結した結果、この男女入り乱れてのメイド?喫茶が誕生したという事実は、生徒会と一部の人間の間の秘密である。
「そうかそうか。先日も我に隠れて何やらこそこそしていたのもこの準備であったか。そういう事由であれば弁解を許してやらんでもないぞ?」
「別にお前の為に準備してた訳じゃないー!」
 すっかり涙目で抗議する士郎をよそに、ギルガメッシュは満足そうに一人頷いた。
「いや、我に奉仕しようというその心意気は気に入ったぞ雑種。特別に愛でてやろう」
「嬉しくないー!」

 結局、この後ギルガメッシュがこの侍女を貰い受けるが、いか程かとか言い出し、必死で士郎に止められるまでケーキやら何やら注文しまくり、良いお客さんとして歓迎されていたらしいという事を記しておく。







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