web拍手ネタ〜雑多編〜4
※カップリングが本気で雑多なのでご注意下さい
13 (ペキ) アンリ士アンリ? 二周年記念拍手花○葬パロ
※有名作品のパロになります。
心を広く持って挑んでください。
赤の守護者は言いました。
たった一つを消せば世界はまた続いていくのだと。
〜英雄帰葬〜
目を開いたら、そこは白銀の世界。
ただただ、何処までも白が続いている中、何故ココに自分がいるのだろう、と思ったとき。
少年は同時に、自分が何も覚えていない事に気づいた。
自分の名前も、自分のことを心配そうに覗き込む赤毛の少年の事も、何一つ。
「……ぁ? えっと、何だお前?」
「何だとは何だよ。……まさか、もしかしてホントに忘れたのか?
全部」
「……全部忘れたって……ああ、なるほど。確かに何も思い出せね、なんだこりゃ?」
「うわ、マジか?」
「オレがききてぇよ。で、オレは誰で、お前は誰なんだ?」
「……俺は、士郎。お前の――兄弟だよ、アンリ」
兄弟だと名乗る少年。
髪の色や目、肌の色は違うが、鏡を見ているかのようにそっくりな顔立ちの彼の言う自分たちの過去や生い立ちは、何処までもちぐはぐで信じがたく、こいつ嘘がヘタだなぁと黒の少年は思ったけれど。
自分の『兄弟』があまりにも必死なので、それに付き合ってやってやる事にした。
――人が人を殺しすぎた時、女神の悲しみからソレは現れる。
人の罪の象徴、この世全ての悪(アンリマユ)。
それはその悪性をもって、世界をゆっくりと滅びに向かわせる。
しかし女神は同時に、人々に希望も残してくださった。
たった一人、この世全ての悪と対をなす存在――正義の味方。その【善】の象徴をもって【悪】を滅ぼせば、世界は救われるとされている――
******
「よ、元気か?」
いつの間にそこにいたのか、窓枠に腰をかけ気安く声を掛けてくる鮮やかな蒼をまとった男に、深い紅の外套の男は不快感をあらわにした。
「……何の用だ? 蒼の鳥。 敵の陣地にのこのこと顔を出すなと何度もいっているだろう。
貴様の仕事は、世界を【贖罪】させる事。帰って、おとなしく主に課された役割を全うするがいい」
「んだよ、かてぇなぁ、相変わらず。 その時がくれば世界は【贖罪】されるか、【救済】されるさ。――選ぶのは、オレたちじゃあない」
「選ぶのは私たちでなくとも、導くのは私たちだ。貴様はさっさと黒の子の元へ戻れ」
「ああ、それなんだが。
どうやらアイツ、お前ントコの子と一緒に居るみたいだぜ?
どうするつもりなんだ、朱の鳥さんよ」
「……何?」
あかいとりは、救済の鳥。 世界を救う、英雄の守護者。
あおいとりは、滅びの鳥。 世界を贖う、悪魔の庇護者。
【善】と【悪】を導く、創造主の使い。
「お前は真面目すぎるんだよ、アーチャー。何に対してもな」
「貴様は何に対しても不真面目すぎるな、ランサー」
彼らは彼らの願いのために、それぞれの子を運命へと導く。
******
「……え? あん、り? お名前、アンリっていうんですか?」
「あ? オレもよくわからねぇけど、どうやらそうらしいぜ?」
立ち寄った村で出会う、桜色の少女。
「それは――めずらしいですね。 その、大変じゃありませんか?
そんな名前だと、その……」
「大変って、何が大変なんだよ?」
「え、その、だって――」
『それは、滅びの名じゃ、ないんですか』
体調を崩した士郎を休ませる為一晩の宿を借り受けたアンリは、だんだんと士郎の言葉の「嘘」に確信を持ち始める。
「気にするなよ、アンリ。名前なんて、お前自身の人となりには関係ないだろ?」
「別に、そっちは気にしてねぇけど? 気になってんのは、別のこと。……お前、オレになんか隠してんだろ?」
「……」
「……ま、言いたくねぇならいいけどよ?」
口を閉ざす士郎と、聞き出さないアンリ。
ほんのわずかな心の溝が、彼らの間に横たわる。
*********
「お、思ったより元気そうじゃねぇか、坊主もお前も」
「んだよこの蒼いの? 趣味ワリィ服」
「ぁんだとこのガキ、記憶失ってるっつうのに全然変わらず可愛くねぇなぁ?」
「ら、ランサー! 今はそんな事話してる場合じゃないだろ!?」
訳も分からず捕らわれた先の牢屋に助けに来たのは、蒼い長身の男だった。
連れ出された2人の少年は、男の言う安全な場所――最果ての塔の上へと運ばれる。
「オレはランサー。ま、お前の親みたいなもんだ、アンリ」
「……ってことは、士郎の親でもあるわけじゃねぇのか?」
「あ、いやほら、俺とアンリは兄弟だけど、別々に引き取られたからってことで……!」
「お、そういう設定なのか?
じゃあそういうことにしといてやるよ、坊主」
「……お前ら、だまそうとすんならせめてもうちょっと何とかしろよオイ」
そんな、彼らがつかの間の休息を手にしているわずかな時ですら、世界は確実に崩壊の兆しを見せていた。
**************
――人が人を殺すことは、最も罪深い行いである。
人が互いに憎しみあい、奪い合い、戦がおき……そして数多の血が流れた時、ソレは最後に現れる。
人の全ての罪を背負った者、【この世全ての悪(アンリマユ)】。
女神の悲しみより生まれた彼は、その存在だけで世界を贖罪――滅びに向かわせるとされる。
彼がいる限り、滅びの時は確実に近づいてくる。 ゆっくり、ゆっくりと、降りしきる雪と共に、世界は白銀の中へと埋め尽くされていく。
しかし、同時に女神は、世界を滅ぼさずに救う方法も残していった。
たった一人、この世全ての悪と対をなす存在――アンリマユが生まれた時に同時に生まれるとされる、正義の味方の存在。
その【正義の味方】の手でのみ【アンリマユ】は倒され、世界は悪の存在の消滅と共に救済を得る。――
そして、最果ての塔に全ての役者がそろった刻、少年たちは選択を迫られるのだ。
「……役目を果たせ、士郎。ソレがお前の役目であり、理想であったはずだろう?
【正義の味方】よ」
「創造主と共にこの世界を去ろうかとも思ったが……アイツがこの世界を、人を、好きだっつうんだからしょうがねぇ。
一人ぐらいは同僚がいないと寂しいだろ?
それに……オレもこの世界、ワリと気に入ってるんでね」
「オレを殺せよ、士郎。簡単だろ?
そうすりゃ全部丸くおさまんだ。はじめっからオレはそういう風に生まれついた。
罪は全てオレが持っていくから、お前はお前の好きな『皆』を守ればいい、それだけだろ?」
「違う! そんなのは、誰か一人を犠牲にして得る平和なんて、俺の理想じゃない! 俺は、大切な人を――アンリを、助けたいだけだ!」
しかし、全てははじめから分っていたのだ。
……善の象徴である少年が、悪という【ヒト】を殺せるわけが、ないのだから……。
「それでも俺は、アンリを殺したく、ない」
人の命が塵のように消えてしまうのがあまりにも悲しいので、女神はそうならない世界を作ろうとしたのだ。
たったひとりを、礎にして。
英雄帰葬
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「……へ? お前が、アンリマユ?」
「へぇ、アンタが正義の味方?
おもしれぇな、オレら割り振られた役は正反対なのに、そっくりじゃねぇか」
「だな……。なんか変な感じだ。
ホント似てる、まるで俺達……」
――兄弟か何かみたいだな――
それは、そんな出会いから数年後の、運命の刻限の話。
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