web拍手ネタ〜雑多編〜9
※カップリングが本気で雑多なのでご注意下さい


27 (椎名) 金士


「なぁギルガメッシュ、お前さ、俺が浮気とかしたらどうする?」
「……なに?」
「あいや、何となく想像はつくちょっと気になっただけというか何というかそういうつもりは毛頭ないんだけど!」
「ふん、何をたわけたことを。貴様は我の所有物であろう、よもや浮気をするなど万死に値するという事すら分からぬほど愚かであったか雑種」
「はははーやっぱそうだよなー」
「ふん、分かっておるのなら下らぬ事を聞くでないわ。
「あぁ、自分でもたまたまそういうドロドロしたドラマ見たからって何でこんな事聞いたのか反省してます」
「……で、貴様はどうなのだ」
「へ?」
「貴様は我が別の物に興味を移したらどうすると言うのだ?」
「……」
「なぜそんな驚いた様な顔をする」
「いや、お前がそんな事気にするなんて思ってなかったから」
「かっ、勘違いするでないわ! 我がその様な瑣末事など気にするものか! 第一我に答えさせておきながら雑種が答えぬなど許されると思うてか! って何をニヤけておるかこの痴れ物がぁ!」






28 (ペキ) 金士(ですがなぜか金ぴかが出てこないでアンリさんがいます) 


小雨が降りしきるその日、居間の炬燵では二人の少年が向かい合って座っていた。
かたや赤毛、かたや黒髪に褐色よりも尚暗い色合いの肌。
彩りに違いはあれど鏡を向かい合わせたような二人は、浮かべている表情すらも似ていた。
ただ、表面上は真剣そのものの顔の下で、本当に真面目に考えているのかは謎だが。



「で、ちょっとくらい決まってんの?」

黒い少年――アンリの問いかけに、士郎はその赤毛の頭を横に振る。

「まぁ、消去法で去年あげたようなものとか、アイツから貰ったようなものとかはナシだろうけど」
続けて、まぁそもそもあげた方はともかく、貰ったようなものは被りっこないんだけどさ、とこぼした。

「参考までに聞くけど、どんなんだよ?」

えーと、と思い返す様に指折り数えはじめる士郎。

「ゴディ●の限定7万円とかいうメチャ高いチョコレートとか、無理やり連れてかれた展望レストランのVIP席で専門のショコラティエがこれでもかというくらい濃い味のショコラフルコースとか」
「あーもういいゴチソウサマ」

聞いているだけでこのブルジョワがと罵りたくなる内容に、アンリは金銭的な意味でお腹いっぱいです、と思わずにはいられない。参考までに聞いたが、全く参考にならないことだけはわかった。

「俺が上げたのは、去年は普通のチョコレートケーキだったけど」

士郎が【普通の】、と形容するのならば、おそらくは【相当気合の入った手作りの】チョコレートケーキだったのだろう、とあたりをつける。
さよけ、と相槌を打ちつつ、アンリは嘆息した。

「まぁ一応受け取ってはいたけれど、なんか微妙に不満っぽかったんだよな」

やっぱり金がかかっていないと駄目なんだろうか、と真剣な表情で悩む士郎。
しかし、受け取った本人――ギルガメッシュがその時不満そうにしていたのは、別に手作りのチョコレートケーキに不服があるわけでなく、チョコレートをあげた相手が自分だけではない、という点だった。
ギルガメッシュに手渡したすぐ後に、一緒にやってきたランサーやカレンにも渡すものだから――しかもギルガメッシュの目の前で――、すわ本命チョコかと喜んでいた人物が不機嫌にならないわけはないだろう。
去年のことを振り返りながら、アンリとしてはむしろ、その場でキレて王の財宝をぶちかまさなかっただけ、ギルガメッシュの忍耐力の成長に賞賛の言葉を送りたいくらいだった。
――基本スペックはオレも同じなのに、なんでその辺りコイツ気付かねぇかな。
普段の士郎は、恋愛や人心の機微に関して不得手はあるが、そこまで鈍くはないはずなのだが。
と、そういえば赤い弓兵もこと自分の恋愛関係になるととたんに空気読めなくなるのだったなとアンリは思い直した。
エミヤシロウ共通の失陥のようなものなのかもしれない。
ということは、もしかしてそれを参考に形作っている自分もそうなのだろうか。
そう考えて、アンリは思わず身震いする。
――いやいや、オレはほら、上澄みはコレでも、根本が全然ちがうから。ほら。
自身に言い聞かせつつ、目の前の朴念仁に胡乱な目をやる。
士郎にその辺りのことを指摘してやれば、今年はご不満なギルガメッシュに連れさらわれて2日程行方不明になる、等ということもないだろう。
……ないだろうが、アンリとしては教える気はさらさらなかった。
みすみすそんな面白い事態を逃す彼ではない。
自分に被害がこないトラブルほど、面白い見世物はないのである。
こうしてアホみたいに真剣にバレンタインのチョコレートを悩む彼の相談に乗ってやっているのも、そういった娯楽の一つだった。

「どうせお前が内臓売るほど金かけたところで、金ぴかが買ってくるような物価がブロークンファンタズム起こしたようなチョコにゃかなわねぇだろ」
「だよなぁ。既製品であいつを満足させるのなんかむりだろうから、だとするとやっぱり作るしかないんだけど」
「何を作ればいいかわからない、と」

どうやら振り出しに戻ってしまったようだ。
たかがチョコレート、されどチョコレート。
男同士なのだからそこまで気張らなくても、と女性メンツならば苦笑したかもしれない。
しかし、逆に男だからこそ、バレンタインにチョコレートを貰うというのがどれほど嬉しいかを知っている。
妥協、という発想だけは、士郎はもちろんのこと、アンリにすら浮かばないのだった。


「手作りで、ギルガメッシュが気に入るようなヤツってどんなんだろうな?」
「派手なのだろ、そりゃ。ほら、溶かしたチョコを滝見たいに流すタワーとかそういうやつ、あいつ好きだぜ絶対」
「いや、金かかるだろ。それ。買ってるのとかわらないし」
「だろうな」
「真面目に考えろよ……」

真面目に考えたらそもそもお前の相談に乗ってねぇよ。
アンリは胸中で冷やかしつつも、次の案を口に出す。

「じゃ、チョコレートで造形美でも目指すとか? 飴細工みたいなアレ。金ぴかの全身像でも作ってやったら喜ぶかも知れねぇぜ?」

ヒヒヒ、と茶化すように笑うアンリ。無論本気ではない。
士郎はその言葉に、む、と眉をしかめる。
意外と短気な彼のことだ、怒りだすかとアンリが少々身構える。
と。

「……そうか、それ、いいな」
「へ?」

ぼそりと、しかし確かに肯定の言葉を零した。

「……ああ、うん、いけそうだ。サンキュ、アンリ。なんとかなりそうだ」

じゃ、構想が薄れないうちにちゃっちゃと準備に行ってくる、と。
士郎はすぐさま炬燵から立ち上がり、居間に呆けたアンリを置いて外へ出てしまう。
残された悪魔は、ぼんやりとその背中を見送り。

「いけそうだ……って……金ぴかの全身像を?」

まさかな、と呟いたアンリはそのまま炬燵に潜り込み、夕餉準備までの短い時間、昼寝を楽しむことにした。
あの微妙に常識はずれな輩のことだ、もしかしたらもしかするかもな、と思いつつ目を閉じる。
そうなったらそうなったで、さぞかし楽しいことになるだろうから。




2/14当日、金ぴかにどのようなものが渡されたのかは、また別の話。
ただ、ひどくご満悦なギルガメッシュの姿が目撃されたことだけは、確かだった。




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