ボコ題に挑戦

01:たたく
02:つねる(槍弓)
03:噛む
04:叫ぶ
05:口の端が切れた(槍弓)←NEW
06:ひっぱる
07:殴られた(弓士)
08:泣きわめく
09:抵抗する
10:鼻血(槍弓)
11:マウントポジション
12:立てない
13:徹底的に(金士)





2.つねる(槍弓) 椎名

「あっふ」
 そんな魔の抜けた声が、辺りに小さく響いた。

 良く晴れた日の午後。
 あくびの主――ランサーは取り立てて何をするでもなく、昼下がりの飼い犬よろしく縁側で日なたぼっこに興じていたりするのだった。
 そんなランサーとは対症的に、庭をぱたぱたとせわしなく動き回る人影一つ。
 天気が良いからと午前中に張り切って干した洗濯物を黙々と取り込んで行くアーチャーの姿に、ランサーは本当にこれが英霊かと思うのだが。
 重たい瞼を半分閉じながら、ぼんやりと英霊眺める事暫し。
 ようやく洗濯物を取り込み終えて、ふうと額を手の甲で拭う仕草に、ランサーは一瞬息を飲み、目を瞬かせふむ、と一言呟いた。
 午後の低くなり始めた日差しが、アーチャーの健康的な肌の色によく映えていた。
「アーチャー、ちょいちょい」
 呼びかけられ、アーチャーは訝しげに眉根をよせながら歩み寄る。
 その顔をしばしじーっと見つめるランサー。
「な、何だ?」
 アーチャーが一瞬たじろぎ、ランサーの右腕が伸ばされ。

 むぎにゅ。
 とか良い音がした。

「何のつもりだランサー?」

 ランサーにつままれた左の頬とは反対側の口元をひくつかせ、アーチャーはにっこりと微笑んだ。
 無論、目は笑っておらず額に青筋立ててだが。

「いやぁ。ぷにぷにで気持ち良さそうだなぁって。何となく?」

 へらーっと笑って小首を傾げるランサーに、アーチャーは満面の笑みを浮かべた。
「そうかそうか。『気持ち良さそう』だから『何となく』か」」

 言ってアーチャーは右手を伸ばし。

 むぎゅにゅ。
 とか良い音をさせてランサーの頬を掴んだ。
 
 ぎりぎりとか痛そうな効果音すら聞こえて来そうな程に指先に込められた力に、ランサーは思わずこめかみをひくつかせる。
「なぁ、アーチャー」
「何か?」
「俺が悪かったの認めるけどよ。もちっとこう、手加減ってもん出来ねぇか?」
「ふ。それはすまない。気持ち良さそうだったのでつい何となくな。」
「てんめぇ人の揚げ足取るような事ばっか言ってると後で泣かすっ!」

 他の第三者が見たら阿呆らしい事この上ないが。
 まぁ、微笑ましい、日常の風景である。






5.口の端が切れた(槍弓)椎名

 その味覚への刺激には、取り合えず慣れていた。
 むしろ慣れすぎていて、言われるまでそれと気づかぬ程には、その味も鼻を突く匂いも自身に染み付いた物だったから。
 そりゃあこんな鉄臭くて粘つくだけの物など、嫌うまではなくとも好くでもなかった。
 最も、この匂いに否応無く気分を掻き立てられてしまうのは否めなかったが。
――訂正。
 恐らく自分は、この匂いが好きなのだろう。
 それは自身が戦の在処に身を置いている証。
 戦いに勝利した物だけが、この吐き気すら呼び起こし、噎せ返る様な匂いを、最高の美酒へと昇華させる事を許された時代に、自分はいたのだから。

 ではここで質問。
 今、口内を犯し、切れた口の端からじわりと滲むコレはどうだろう。
 ずきずきと疼いて沁みてちくりと刺すような、手で一度拭えば済む程度の僅かな傷口だ。
 だがそれを寄こした相手を思えばどうだろう。
 応えは単純すぎて、知らず笑いが漏れた。
  あぁ、こういうの、この時代の言葉でマゾヒストって言うんだったか?
 終ぞ考えたことなどなかったが、どうやら自分はそういう面も持ち合わせているらしい。
 そりゃあそうだろう。
 愛する者から寄こされた傷が、こんなにも意地らしく主張しているのだ。
 愛おしいと思わずにいられるものか。
 ふと、その愛しい痛みを寄こした愛しい相手はどんな顔をしているだろうかと顔を上げ――

びす、とかやたら痛そーな擬音が聞こえて来そうな勢いで、見事な脳天唐竹割りを叩き込まれました。



「アーチャー、それ結構痛てぇ……」
「たわけ。ちょっと当たり所が悪くて口の端が切れたぐらいで大げさな」
「うーわー殴っといてひっでー」
「いきなり背後から抱き付いて来るのが悪い。つい裏拳かましてしまったではないか」
「つい、でお前は人のスキンシップの試みを無残に抹殺する訳ですかこの鬼! つうか馬場チョップはねぇだろちょっと俺より背ぇ高いからってよぉ!」
「ほぉ、良く知っているな。ならついでに伝説の左足でも食らってみるか?」
「いらねぇよ!? つうかぜってーお前足のサイズ十六文もねぇだろ!?」
「細かいな」
「うるせぇこの朴念仁! ムードクラッシャー!」
「それは違うぞランサー。 初めからムードも何もな」
「あーもう分かった期待した俺が悪かったいいから一発殴らせろー!」






7.殴られた (弓士) 椎名

 頬に叩き込まれる。
 聖杯という奇跡を借りて現界している仮初の身体でも、やはり殴られれば痛みを感じるらしい。

 あぁ、それで良い。
 笑いたければ笑えば良い。
 お前が寄こしたこの痛みに、私は確かに喜んでいる。

 それは私が願い続けた奇跡。
 こんな絶望しか知らぬ愚者の芽を刈り取るという、愚かな願望。
 その奇跡の舞台にいる、確かな証しにも似て。

 さぁ。
 お前は、どうだろうな。
 衛宮士郎?






10.鼻血 (槍弓) 椎名

 おかしい。
 何がと言われると困るけど。
 何かがおかしい。
 
 そう内心で呟きながら、ランサーは隣の席でなにやら難しそうな本を読み耽っているアーチャーの横顔を伺った。
 
 そう。
 隣の席。

 いつもなら自分が隣に座ると『わざわざ隣に座るな!』と追い払われるのだが。
 何故かすんなりと隣を確保できるとは。

 持ってきたグラスの中の麦茶を一口飲みつつ、横目でちらとアーチャーの様子を伺うと、相変わらず本を読んでいるアーチャーの姿。
 あるいは自分が隣に座ったことも気にしない程に集中して読んでいるのだろうか。
 試しにぐい、と身を乗り出して近寄ってみる。
 反応無し。
(んー、これはひょっとすると……)
 ランサーはそろりと、アーチャーの顔へ唇を寄せる。
 届くまであと数センチ。
 そっとアーチャーの肩へと手を伸ばし……

 ばきぃ
 とか良い音を立てて全力で殴られましたとさ。

 煙でも上げていそうなアーチャーの拳。
 声にならない声で呻いて、ランサーは鼻先を押さえてうずくまる。
「お前……いきなり顔面グーで殴るこたねぇだろー!」
 耐え難い痛みに、涙目になって抗議するランサー。
「たわけ!人がちょっと気を許していれば……油断も隙もあった物ではないな」
「へ?」
 顔を真っ赤にして額に青筋立てるアーチャー。
 ランサーは呆けて目をぱちくりと瞬いた。
(気……許してくれてたのか……)
 などと考えていると。
 鼻腔の当りに、何か生暖かい違和感。
 恐る恐る手の甲で拭ってみると。
「てんめぇ……鼻血出たじゃねぇかー!」
 ほとんど泣き出しそうになりながら、ランサーは絶叫した。
「ふん。自業自得だな」
 言いながらも、少々やり過ぎたかと少しだけ反省していたりするのだが。
 ティッシュを求めて這いずり回るランサーには、そんな事知るよしも無いのだった。






13.徹底的に (金士) 椎名

「問おう、雑種。」
「な、なんだよ」
「前から思っていたのだが……どうもお前は王である我に対して敬いという物に欠ける」
「当たり前だ。誰がお前なんか敬うか!」
「何だと!? 貴様は王を何と心得るか! おのれ愚民めだから王を掲げぬ民は駄目なのだ!」
「いやそれ関係ないし。だいたいお前は確かに王様だったかもしれないけどここじゃ王様じゃないだろうが!」
「貴様! 我を愚弄するか雑種!」
「お前こそいい加減この時代のルールに従え不良サーヴァントっ!」
「おのれ雑種! 今日という今日は誰が主なのか徹底的に叩き込んでくれるわ!」
「うるさいっ! 居候の癖に態度がでかいぞこの不良サーヴァント!」
「ほぉ。では聞くが、この家の資金源は誰だったか答えてもらおうか?」
「ぐ……べ、別にお前になんかに頼らなくても平気だっ!」
「た、たわけが!誰が頼ってくれなどと言ったか!」
「待て。そうするとお前ここに居る意味がないぞ?」
「なっ! おのれ雑種! 貴様に取って我の存在価値とは金銭面の援助のみなのかそうなのか答えよ雑種ぅぅぅ!!」





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